
冷たい雨が降っていた。
駐車場から傘もささず、クラブハウスのエントランスへ駆け込んだ。額をつたう雨垂れをハンカチでぬぐいながら自動ドアをすり抜けると、ハウス内は騒然とした雰囲気がたちこめていた。
雨と霧でプレーが中断していたのだった。プレー中のはずの有名プロの顔がちらほら見える。待ち合わせのレストランへの階段をのぼるとすぐにレインウェア姿の石川遼くんのパパとすれ違う。硬い表情だ。「遼くん調子イマイチなのかな?」(結果そうでした)。
ご招待頂いた方への挨拶とランチを頂いて、プレー観戦できないのは残念だが帰路へ。
階段を降り、ふと気配を感じた先のロビーソファーに目をやると、そこに19歳の松山英樹くんがいた。胡座をかいて少年ジャンプ(だったと思う)を真剣な顔で読んでいる。近寄って「松山くん!」と思わず声をかけた。私を一瞥した彼は、すぐさま漫画を閉じて、すくっとたちあがった。まじまじと彼の瞳を見つめながら私は「がんばれ!絶対優勝だぞ」と気合いの握手。「ありがとうございます。頑張ります」はにかんで彼はギュッと握り返してくれた。
瞬き3つのあいだの出逢い。
その2日後、アマチュア大学生の彼は大会を制覇し、国内初優勝を成し遂げた。
月日は流れ、彼はプロとなり、世界一のゴルファーとなるべくアメリカへ渡った。時々テレビに映る彼の姿を見るたびに、あのときのあどけない少年のかけらのうすずみが残る瞳が甦る。
今日アリゾナ州フェニックスオープンを連覇。PGAツアー4勝目。青木、中島、丸山といった名プレイヤーの背中を追い越した。
彼は今来季、必ずや海外メジャーを制するはずだ。