Chanel's Heart -5ページ目

路地裏の少年


うらぶれた路地裏をうろつく少年を見た

「おまえ、悲しい眼をしているね
  何がそんなに悲しいんだい?」

「僕ね…愛に飢えているんだ
 でもね、飢えも過ぎれば空腹もそんなには感じなくなるんだよ」

「でもね でもね…心にはいつも雨が降っている
 傘は忘れ失くしてしまったし
  宿る屋根もみあたらない」


夏の雨にさえ凍えるならば

おいで おいで

僕が優しい歌を歌ってあげるから

そんな悲しい眼は誰にも見られぬように

誰にも気付かれぬように眼を伏せたままでいいから

おいで おいで

歌を歌ってあげるから




砂浜


今は潮時

誰もいない浜辺を一人彷徨えば

優しい波が足元を洗ってゆく

その波音に合わせて鼻歌えば

いつかのメロディーが追いかけてくる

♪二人見た夢を二人で叶えよう


解っていたよ

きみの心に差した陰が

次第に大きくなってた事

その陰を追い払う事ができずに

ただただ怯えてた

添える日々は少なく

すれ違いの毎日

それでも愛があればと…


重荷は降ろして

海へ流しておくれ

僕の想いは砂に埋めるから


足元さらう強き波

よろけ行方も波まかせ

いっそもっと強く打ち返し

僕の想いも流してしまえ




心の川


まだ明けやらぬ闇の中
くたびれた愛車を置き去りにして歩き出す
鬱蒼とした杉林に続く登山道は闇よりも暗い…

まさか獣の寝姿にも見える切り株に怯えながらも
いつか開けるであろう空を思って

夏の夜明けは気持ちがいいね
まだ蒸し暑い夜の帳を冷気が癒していく

長い道のりだ
心洗う清流にたどり着くにはこの夜を越えていかねばならない

登山道を外れ河岸をゆけば空が白んできて
鳥達が目覚めの歌を口遊むだろう

もうすぐ大岩だ

次はあのプール
そしてガレ場の果てには別の大岩が待っている

通い馴れた道なき道

一汗の背中を涼風に後押しされればなだらかな河原が見えてくる

さあ…もう少し…



心に流れる川の水は枯れる事がなくて

その瀬音はいつだって穏やかに癒しの歌を奏でている

今日は特別な日だから…

僕の想いもその流れに浮かべてみよう

嫉妬の果てに諦めた事や

縋りきれぬ虚しさをも一緒に


流れてゆけ

砂のように乾いたきみの心まで

真心の小舟に優しさの帆をかがげ

沈まぬように少しだけ愛のせるから

流れてゆけ

流れてゆけ

…きみのところまで




再会


きみと再会した夢を見た

うれしくて うれしくて

嬉しさのあまりに…

心にもない言葉をはく

きみの顔が雲ってゆく

あ~

僕は不器用なんだね

優しくしたかったのに

儚さの中にきみの笑顔が揺れている

「ばかね…」


うつら うつら…

ポツンと目覚めれば

そこはいつもの味気ない世界

目覚め悪さも夢の続き



夢でよかった




ピエロ


真意は僕の胸の中

それは言葉にせねば伝わらぬけれど

結果を思えば告げぬほうが良いのだろう

それを真心と言い聞かせて…


遠回りをするのなら遥か彼方

その存在も消え入る程に

風の噂さえ探せぬよう

静かに 静かに

色亡き影に成りゆきて




霞む想い出

僕には怖いものなど何もないよ

例え孤独が僕を連れ去ろうとしていても

誰もが淋しさに耐えられず

その生き様を誤魔化して正当化している

一途に…

想い続けるのは辛い事だ

約束も安堵もなく

ましてや愛の確証もないままに


Chanel's Heart-暗雲

暗雲立ち込める暗き道

まるでいつもの人生のよう

それでも怯える事はない

雨は明日にも上がるだろうし

霧なら直ぐにでも晴れてくる

歩め 歩め

滴る汗はそのままに

いつか頂上は見えてくる


Chanel's Heart-Lord

Chanel's Heart-花畑

花を見て何を思う?

一時の安らぎか

それとも明日の夢に色を添えるのか

小さな花が揺れている

その健気さが

失くした純情を思い出させる


Chanel's Heart-階段

誰もいない山頂からあろう筈の次のピークを仰ぎ見る

風は相変わらず雲を飛ばし

姿見えぬ鳥は愛の歌を口遊んでいる

僕も誘われて口遊んでみる

心に刻まれた忘れ得ぬ歌を

何故かポトリと涙がこぼれた


Chanel's Heart-身えぬ行く先

眼を閉じたらきみの声が聴こえたよ

「好き…好き…あなたが大好き」 と

『いつか二人でこの道を歩こうね』 と

届かぬ言葉を心にとなえ

見えぬ山頂に普段出さぬ大声で別れを告げた

「さよ~なら~~~」 と

霞む山頂はこだまも返さず

その姿は記憶の中だけに揺れている


Chanel's Heart-帰路

帰路には我も人心

行き交う人には愛想笑い

赤目は汗の所為として

額と共に目も拭う

霞む花々忘れな草

心に咲けばなお枯れず


Chanel's Heart-コウメバチソウ



    

None Step


悲しければ悲しいと

淋しければ淋しいと

苦しければ苦しいと

素直に言えたらいいのに

心にポッカリ空いた穴から

想い出さえもこぼれてく

どんなにどんなに詰め込んだって

ポロポロ ポロポロこぼれてく


痛い心引き摺り歩けば

削れて小さくなるばかり

消えてなくなりそうな心に

痛みばかりが増してゆく


愛をください

…愛をください

僕はもう

歩けない




Last Letter


「きみは役者にはなれないね。
 嘘をつくのが下手だし淋しさも隠せないもの」

嘘つきは僕も嫌いだよ

だけど僕も嘘つきだから…

些細な嘘も見えてしまう

見え透いた嘘に騙された振りをして

それできみの淋しさが薄れるのならって

もういいんだよ

誤魔化すことはない

自分の心に正直になって

堂々と振る舞えばいい


眼を閉じればきみとの想い出が浮かんでくる

思えば楽しかった日々ばかり

ある日きみは僕に縋って泣いたね

「あたしだって淋しいのよ」 と

受け止めきれず

その歯痒さに僕も泣いた

あれから切なさ増すばかり

きっときみの心の隙間も埋まらなかったのだろう

ありがとう

ありがとう

僕も淋しかったのさ

けれどもう…


とどまる風は淀むばかり

風は風なりに吹いてゆく

ずっと吹き続けながらも

時折きみとの時を想うよ

暖かかったあの日々を




ひき際


もう泣くのはよそう

孤独を引き摺れば痂が増えるばかり

感情は押し殺し

ただ生活に埋もれればいい

それしか身を守る術がないのなら

追えば惨めにうなだれて

縋れば足蹴と恋相場

淡い夢の果てには

悲哀の雨が降りそそぐ


待てば我が身は…

色無き化石

忘れ去られた時の奥狭間




気配


心苦しければ眼を閉じて

そっときみの事を想う

いつかの会話は

遠い夏の蜃気楼のようだけれど…


雨あがり

夕暮れ

解けて消えそうな角氷

書きかけのフレーズはそのままに

『ずっと愛しているよ』と


ベタ付く汗に想い出さえも纏わりついてくる


逢いたい

逢えない…


告げる想いは心にしまい

ただ消えてなくなりそうな氷を見詰めてる


ほろ酔いまどろみ寝呆ける頃には

きっと月が昇るだろう

細く頼りない三日月が

その三日月の明かりにさえも

今は縋ってみよう


僕を…

導いておくれ

…愛しい人よ