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 最近、家の周辺をグーグルアースで見てみたら、ソーラー発電をしている小規模な施設がたくさんあることに気づいた。いずれも空き地利用の小規模発電施設である。
 地方には、高齢化によって、固定資産税と水利費を払わされるだけの負債お荷物に過ぎない休耕農地がたくさんあるけれど、営農型ソーラーパネルの設置によって、このような小規模農家を救済することが可能かどうかと思いつつ読んでみた。2015年7月初版。

 

 

【コンパクト・ソーラー発電】
 東日本大震災後、政府は電力買取制度を促進させました。・・・中略・・・。コンパクト・ソーラーもその一種です。「土地を持っていない人には難しい」「電力の買取価格が32円/kwから下がると儲からない」という声を聞きます。本書では、そうした疑問への回答や課題を紹介しています。コンパクト・ソーラーは、メガ・ソーラーのように数億円規模で行う事業ではありません。土地を持っていないサラリーマンでも始めることができ、安定的に、しかも長期間キャッシュを生んでくれる発電システムです。コンパクト・ソーラーによる発電投資を活用すれば、個人でも20年間で1600万円の収益を得ることも可能です。(p.5)
 著者さんが進めているコンパクト・ソーラー発電とは、発電量10~50kwという規模のもの。
 20年で1600万円の収益ということは、単年度で80万円を見込めることになるけれど、そこまで大きな投資効率を達成するには、企画・税金・管理・ファイナンスを最善なものにすることが重要なのは言うまでもない。

 

 

【買取価格】
 2014年のデータになりますが、太陽光発電先進国であるドイツでは約17円、スペインでは約15円と、日本のおよそ半分ほどの価格となっています。・・・中略・・・。
 日本もこうした世界の太陽光発電事情に倣い、買取価格は今後もっと縮小するだろうと予想されていますが、それでも全量買取制度による価格や期間は保証されています。電気を売れなくなるというリスクはありません。(p.38)
 弊社では、たとえ買取価格が20円程度に落ちたとしても、企業努力で利益が出せるよう日々努力しています。(p.94)
 日本の買取価格は、2015年6月まで29円+税、7月から27円+税、2016年は24円+税、2017年では21円+税=22.68円に下がり続けている。
 それでも、ドイツやスペインの価格に比べれば、利を生む余力ありと考えることができるだろう。
 ちなみに、施工の着手が遅れても申請認可時の買取価格は保証されるので、ソーラーパネルを施工するなら認可申請は早い方がいい。施工完了が申請認可時から3年以内であれば、売電開始から20年間、買取価格は保証されるということである。

 

 

【都道府県 県庁所在地別日射量データ・ランキング】
「年間最適傾斜における日射量ベスト10(2013年)」
 1:甲府市、2:高知市、3:宮崎市、4:静岡市、5:岐阜市、6:名古屋市、7:鹿児島市、8:徳島市、9:松山市、10、広島市 (p.90)
 ベスト10に入る地域の共通点は、いずれも冬場(12~2月)の日射量が圧倒的に多いこと。
「都道府県 県庁所在地別日射量データ・ランキング」
 1:那覇、2:宮崎、3:高知、4:甲府、5:鹿児島、6:松山、7:和歌山・静岡、9:徳島、10:広島、11:熊本    (p.31)
 出典はどちらも、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
 4位まで3.9(kWh/㎥・day)代で、7位までは3.8代。最下位の青森で3.29だから、どの地域であっても施工会社の企画努力次第で利益を生むことはできるだろう。

 

 

【維持費用】
 砂ぼこりなどでパネルが汚れてしまった場合でも、たいていは雨で洗い流されます。太陽光発電所ネットワーク(PV-Net)では、ほこりが舞いやすい高速道路付近や火山灰が降る地域といった特殊なエリアを除けば、汚れをさほど気にする必要はないと報告しています。(p.91)
 問題になる汚れは、油分を含む汚れと、鳥のフン。
 日本品質保証機構(JQA)が行った試験によると、パネルが汚れることで年間1.0~2.2%程度の出力低下が見られるそうです。弊社では月額3500円のメンテナンス料で管理していますが、これによって十分トラブルは回避できています。(p.91-92)
 家賃収入を見込む不動産投資の場合は、クリーニング代やリフォーム代という不可欠な維持費があり、利益率を考慮する上では、さらに空室率という不安定要因があるけれど、ソーラーパネルならそれらはない。
 ソーラーパネルの維持費は、純粋に、汚れ落しとメカニカルな点検整備費ということらしい。
 他に、災害に備える場合は、それなりの保険に加入する必要がある。

 

 

【出力劣化率】
 産業技術総合研究所による出力劣化特性評価実験によると、太陽光パネルの1年目の出力値を100%とした場合、20年後だと単結晶シリコンパネルで約85~88%、多結晶パネルで約88~91%の出力低下にとどまっています。
 単結晶シリコンパネルで約12~15%、多結晶パネルで約9~12%の出力低下が見込まれる。
 20年で14%の出力劣化率とすると、単年度の出力劣化率は均しで0.7%になる。自分で発電量収入の計算をする場合は、この0.7%を用いて計算すればいい。

 

 

【発電量は夏より春の方が高い】
 発電量は夏の方が大きいと思われがちですが、日射量を季節(3か月平均)でみた場合。夏よりも春の方が多いという結果が出ています。
 その原因は、高温による発電量の低下によるもの。真夏、太陽光パネルが60~70℃になると、25℃のときに比べて15~20%も発電量が低下するといわれています。(p.88)
 夏場高温になるのは、住宅の屋根に設置するとか、地表近くに設置するような場合だろう。
 しかし、営農型ソーラーパネルであれば、2~2.5mの高さに、等間隔で設置されるのだから、風通しも良く、60℃もの高温になることはまずあり得ないと考えていい。故に、夏場の方が発電量は多いはずである。

 

 

【故障のリスク】
 太陽光発電のリスクとして故障を上げる専門家もいますが、実際にコンパクトソーラー事業に携わって来た経験からして、前述の通り保障面が充実しているので、高性能で保証期間の長いしっかりした製品を選べば、リスクとして回避できると考えています。
 弊社では、・・・中略・・・。大きな故障はいまのところありません。(p.88)
 ソーラーパネルは、強化ガラスで作られた絶縁構造体なので、些細な衝撃や雷などで損傷することはないらしい。耐用年数も30年という実績が確認されている。
 但し、パワーコンディショナーに関しては、以下のように記述されている。
 パワーコンディショナーに関しては、10~15年経過時に修繕が必要になります。修繕費として毎月5000円程度を積み立てておくとよいでしょう。(p.91)
 しかし、これについて地元の業者に確認したところ、製品自体に耐用年数として10~15年の補償期間があり、さらに近年は、基盤だけの交換で済むように改良されているので、毎月5000円の修繕費を見込む必要はなく、通常のメンテナンス維持費の範囲内で対応可能であると確認した。

 

 

【「パネルの設置角度」】
 セミナーでよく質問される内容として
 フィット社が提供しているパネル角度はなぜ一般的に最適角度と言われる30度での設置ではないのですか? ということがあります。角度を急にするほど太陽光パネルの陰の影響が発生し、土地の面積が膨大になります。また、傾斜架台の費用が増加します。そうした、設置コストと発電量のバランス・費用対効果を考慮して、設置角度約10度(土地条件による)を採用しています。(p.102-103)
 そう、問題は、あくまでも「費用対効果」である。
 営農型ソーラーパネルであれば、最初から遮光率30~70%になるような等間隔設置なので、陰の影響は考慮する必要はないだろう。また、季節によって「パネルの設置角度」を手動で変えられるような設備も可能だけれど、その架台採用によって費用にどれだけの差が出るかは、それぞれの業者に確認した上で、「費用対効果」を計算する必要がある。
 また、長方形の土地であっても、南向きでない場合、土地形状方向に合わせて平行にパネルを設置するなら、南向きにならないことによる、かなりの発電量低下を覚悟しなければならない。
 架台を南向きに設置しようとするなら、4隅に空白地が発生するのは免れず、農地面積の100%有効利用はできない。
 どちらを選択するかとなれば、利益率から言って明らかに後者である。

 

 

【設備の撤去費用】
 太陽光パネルの経済耐用年数は30年といわれ、20年後も太陽光発電システムの価値は0ではありません。そのパネル等を中古マーケットに売却するなどできれば、撤去費用を無くすことが可能になるのではと考えています。地主への無償譲渡なども可能性があります。(p.146)
 ソーラーパネルを廃棄する場合の費用について、チャンちゃんが地元の業者さんに聞いたところでは、現在、ソーラーパネル廃止処理専用工場を、鳥取県に建設中なので、「20年後には、1枚当たり千円程度も払えば十分だろう」ということだった。
 営農型ソーラーパネルの場合、高さ2mほどの架台が残るけれど、そのまま農作物の生産に有効再利用できるはず。架台まで撤去しようとする場合、問題は基礎部分である。業者にもよるけれど、アースドリルのような杭を地面にねじ込む工法を採用する場合は、杭の支持力を確認しておいた上で、そのまま構造物の基礎としてもちいるか、抜き取るならその場合の撤去費用を確認しておく必要がある。

 

 
<了>