イメージ 1

 バイクにはそれほど興味はないけれど、学生時代にアイドリング中のハーレーダヴィッドソンにまたがったことがあるだけで強烈に印象に残っている。2009年6月初版。

 

【ハーレーダヴィッドソンの魅力】
 オートバイでは世界4大トップ(カワサキ、ホンダ、スズキ、ヤマハ)のお膝元日本で、国産オートバイよりも高価で、しかも性能面でも優っているとはいえないのに、ハーレーダヴィドソンは400cc以上の自動二輪車ではナンバーワンのシェアを誇っているのだという。
 ハーレーダヴィッドソンの魅力をよく聞かれることがある。一言で表現するのは実に難しい。あえていうなら、“人間の五感をくすぐる官能的乗り物”また“心を豊かにしてくれる乗り物”ではないだろうか。(p.11)
 生身の人間の五感、本能に訴えかけてくる官能的なフィーリングとデザインは、長きに亘って人々の心を虜にして離さない。(p.198)

 

 

【ハーレーダヴィッドソン社史】
 その歴史は、20世紀初頭に始まった。1901年、幼なじみの同士であったウイリアム・S・ハーレーとアーサー・ダヴィッドソンは、仕事の合間に「エンジン付き自転車」の製作を始めた。(p.18)
 場所は、ミシガン湖の西岸にあるウィスコンシン州最大の都市ミルウォーキーの小屋の中。
 ハーレーは自転車工場で、ダヴィッドソンは鋳物製作工場で働いていた。アーサーの弟であるウォルター・ダビッドソンも協力していたという。兄のウィリアム・ダヴィッドソンも関わっていて、創業者は、ハーレーとダヴィッドソン3兄弟の4人ということになっている。
 1902年に排気量167ccの手作りバイクが完成したけれど、坂道を登れないような代物だったと書かれている。
 ハーレーダヴィッドソン社は、第1次世界大戦を機に欧州で名を上げたと同時に巨万の富を築き、1918年には世界一のモーターサイクル・カンパニーになった。これは当時財政融資を受けていたミルウォーキーの金融機関M&I(マーシャル&イルスレー)のお陰だったことは、地元ではとても有名な話だ。(p.29)
 世界大戦の時代を描いた映画に出てくるサイドカー付きのバイクは、ハレーダヴィッドソンであるとみて間違いなさそう。
 ハレーダヴィッドソン社は、70年代、AMF(アメリカン・マシン&ファンダリー)の傘下に入ったことがあるけれど、この間に最新機器が導入されたり、生産ラインが分業制になったりといくつかのメリットもあったらしい。1981年には再び独立した。

 

 

【純日本製ハーレー「陸王」誕生】
 日本に初めてハーレーダヴィッドソン社の9-Eモデルが上陸したのは1913年頃だったと書かれているけれど、その後、アメリカからの部品供給を受けて国内生産が開始され、100台ほどが陸軍省に納品されたという。さらにその後、
 1936年には、本国生産されていたエンジンの主要部品のパーツなども国産化することに成功し、ついには完全なる純日本製ハーレーが誕生。これに伴ない、ハーレーMC(モ-ターサイクル)社は販売のみを行い、そして品川工場は『三共内燃機株式会社』(翌年には『陸王内燃機』と改名)として生産を行うという体制が整えられたのである。また同時に「国産車としてふさわしい名前を」という理由から一般に名称が広く募集され、結果として採用されたのが「陸王」というネーミングだった。(p.100)
 世界のビック4と言われる日本メーカーの誕生は、カワサキの前身となるメグロが1937年。ホンダは47年、スズキは52年、ヤマハは55年だった。これら国内メーカーの台頭は、陸王にとって強烈な逆風だった。仕方がない。

 

 

【振動が消えた!】
 ハレーダビッドソンといえば、何といってもあの身体に来る振動なのだけれど・・・
 2000年モデルからは・・・中略・・・エンジン内に振動を軽減するバランサーが組み込まれた、俗名ツインカムBエンジンが搭載された。このバランサーによりこれまでの硬い振動がなくなったのと同時に、当初はスムーズすぎてまったく振動が消え、面白味のないモデルとも揶揄されたほどであった。(p.116)
 振動を体感できないハーレーなんてハーレーじゃないだろう。その後、エンジンを直接フレームに固定していたのを、ラバークッションを挟んで固定するなど、適度な振動を生み出すための工夫があったらしい。

 

 

【大排気量化】
 日本では抑えた排気量の高性能車が人気を博す中、ハーレーがたどる大排気量化の流れはよい意味でメイド・イン・USAを感じさせてくれる。(p.153)
 2009年に4半世紀ぶりにラインアップされた三輪トライクには、1690ccというハーレー史上最大排気量のエンジンが搭載されているという。
 軽自動車の排気量に相当する600ccクラスの国産バイクの燃費って、せいぜい15km/リッターだろう。軽自動車は30~35km/リターだから、いまや軽自動車の方がバイクより遥かに燃費がいい。国産バイクでもこうなのだから、ハーレーの燃費なんて経済性を考えたら論外も論外なんだけれど、ハーレーフリークにとっては燃費なんて考慮の外なんだろう。そもそも、ハーレーダヴィッドソンは、石油文明の覇者となったアメリカの広大な大陸を巡航するイメージで作られた車なのである。
 ハーレーの代名詞は「キング・オブ・ハイウェイ」。一般道をちょこまか走るバイクなんかじゃない。

 

 

【ハーレーダヴィッドソンの国内販売状況】
 ハーレーダヴィッドソンは日本においても、大型オートバイ市場における圧倒的シェアを誇っている。2000年以降は751cc以上のメーカー別登録台数で首位となり、また2003年には、401cc以上でもトップの登録台数という記録を立てた。2008年度には、少子高齢化など多面的な要因から国内4大メーカーのシェアが縮小していく中で、1万5698台という圧倒的な新規登録台数を打ち立てた。(p.171)
 これって、日本も経済格差が広がっていることの表れだろう。燃費など何ら気にしなくていいほど裕福な人々が増えているということである。チャンちゃんが乗っているホンダのリトルカブは60km/リッター走る。ハーレーダヴィッドソンの大型車ならその10分の1だろう。
 そうはいっても、これだけ売れているのには、燃費の悪さを補うだけの要因がある。
 こうした成果は、ハーレーダヴィッドソンが保有するさまざまな魅力に加えて、ハーレーダヴィッドソン・ジャパンという会社が1989年に設立されて以来積み重ねてきた企業努力の集積である。その活動は大型自動二輪免許の取得を可能とする教習制度の改正、高速道路の制限速度を100キロまで引き上げ、また二人乗り通行の解禁という規制緩和にまで及び、自社の利益追求のみならず、日本国内のライダーすべてに福音をもたらしている。(p.171)

 

 

【ハーレーダヴィッドソンが登場する映画】
 『乱暴者』(1953年)、『イージー・ライダー』(1969年)、『ターミネーター2』(1991年)などの映画や映像などのメディア媒体で演出的に用いられ、その結果、古くはエルビス・プレスリー、今ではブラッド・ピッドなど、ロックスターや俳優、著名人など多くのセレブリティに愛され、ステータス・シンボルとなっていった。(p.184)
 『イージー・ライダー』って団塊の世代といわれるオジサンたちが若い頃はやった映画。「なんじゃそれ」って言うくらい、前輪フォークの長~~いバイクの絵を記憶している人は少なくないだろう。

 

 

【ハーレーファッション】
 メーカーがバイクだけでなく自社ブランドのアパレルを作り、定着させるというスタイルで先駆けとなったのは、他ならぬハーレーダヴィッドソンだった。(p.189)
 ハーレーダヴィッドソンに乗っている人が、ユニクロのフリースなんかを着ていたら、確かにちょっと・・・。ハーレー仲間から火をつけられちゃうかも。ヒートテックの下着なら見えないから安全。

 

 

【「あとがき」に書かれていること】
 1982年にアメリカ国内をツーリングしたときの面白い体験が書かれている。
 まだ国産オートバイほど完成度が高くなかったハーレーは、ラスベガスへ向かう途中、チェンジペダルが脱落し、フリーフェイを何度も往復して探したが、結局見つからず。ラスベカスのハーレーショップに立ち寄ったところ、当時アメリカで日本のオートバイが大人気だったため、日本車を嫌がってかショップのピックアップのボンネットには、空を飛んでいる大きな鷲(ハーレーのイメージ)が地面を逃げまわるネズミを狙い、そのネズミには日の丸が描かれていた。ショップの壁にも箸とわらじが飾られ“ジャパニーズ・ツール、ジャパニーズ・ライディングウェア”と書かれていた。ショップのオーナーは、「ジョーク、ジョ-クだよ」と笑いながら言っていたが、ハーレーショップにとっても、性能、品質、コスト、すべてに勝る日本製オートバイが脅威だったのだろう。
 僕の乗った最新型のハーレーにはアメリカ人も興味津々だった。しかも、それに日本人が乗っているのだから余計だったのかもしれない。止まるたびにアメリカ人が寄ってきて、一人がこう言った。「ハーレーはオクラホマの52歳の男の夢なんだ」と。アメリカでもハーレーは憧れのステータスな乗り物であることを実感させられた。
 摂氏50度もあったデスバレーを走ったときは、セルモーターがギヤと噛み合わなくなるトラブルが発生した。ハーレーショップのオーナーが足でエンジンを蹴っ飛ばせばいいと言っていたことを思い出し、セルモーターを石でたたいたところ、見事に直ったのには思わず笑ってしまった。(p.203-204)
 30年も前の体験だとしても、最新型車のチェンジペダルが脱落するとか、セルモーターがギヤと噛み合わないとかって、信じがたい話である。現在のハーレーダヴィッドソンがそこまでひどかったら、いくら日本人でも買わないだろう。

 

 

<了>