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 ソニーの社員として駐印経験の長い著者による本。2011年11月初版。

 

 

【バックパッカーに足りない視点】
 延々と続く武勇伝ばかり続けられると、だんだんと話の内容の浅薄さが鼻についてくる。誤解を怖れずに言えば、ハードなインド人とのやりとりに負けないこと、なるべく安く旅を続けること、それ自体が旅の目的化している若者が少なくない気がするのだ。もったいないなと思う。
 その若者がもし私の息子なら、次のようにアドバイスするだろう。
 「そこまでインドという国になじんだのなら、もう少し視野を広げてあの国を見渡してごらんよ。少しだけでいいから、インド経済を学んでみなよ。あそこは、ビジネスチャンスにあふれてる国だぞ」 (p.21-22)
 社会人経験のない若者のBPに、ビジネス的な視点を推奨しても、そんなにピンと来ないだろう。
 若者BPの体験による学びは、広く世界を見ることで「違い」を常識として認識するとともに、個人的には魂を涵養することに意味があるんだろう。若者に、最初から世界をビジネスの視点で見ることを薦めるのには、賛成できない。しかし、長いことインドを巡っているBPの中には、目が死んじゃってる(トロンとしている)人が少なくない。これでは意味がないだろう。でもインドは長期滞在者をトロンとさせてしまう所なのである。

 

 

【激甘なインドはクセになる】
 見た目のインドも強烈だが、共通するのは激甘なこと。頭にガツンと刺激をくらうほどの甘さ、そして、その甘さの中にスパイスが効いている。これがクセになるのだ。(p.244)
 1回や2回の経験では、激甘の中に効いているスパイスを感じとることはできないだろう。韓国へ行って何を食べても、最初は激辛の下にある味が判らないのと同じである。3日間くらい食べ続けていれば判るようになるのだろう。
 しかし、下痢は3日じゃ済まない。

 

 

【壁を越えるのに2ヶ月】
 「2ヶ月は必要だな。2ヶ月間、下痢して泣けば、もう大丈夫だよ!」
 インドでは、2ヶ月間下痢をして、2ヶ月間泣く。そうすれば壁を越えられる。これは私の実感でもある。(p.91)
 ウェルカム下痢が2ヶ月も続くということ?
 インド赴任を命ぜられた社員は、赴任して早々に下痢になっても、日本の本社はそんな事情を理解してくれない。2ヶ月間、涙目のヘロヘロの状態で働き続ける定めである。可哀そぉ~~~に。

 

 

【日本に住むNRI(Non Resident Indian = 印僑)】
 日本に住む印僑は大使館が把握しているだけでも2万人に上り、東西線の葛西にはインド人が多く住む「インド村」がある。また、最近では、IT系企業が川崎や品川地区に増えたこともあり、川崎市に住むインド人も多いようだ。日本にやってきたインド人旅行者はそうしたNRIの家に泊まるのである。(p.32)
 ちょっと前までは錦糸町付近に多くいたけれど、今は東京湾沿岸に新築された高層ビルにIT系企業が入っているから、そっち方面に多くなっているらしい。

 

 

【チャンドラ・ボーズ】
 私の知人であり元インド情報大臣が来日したときにも、
 「どこに行きたいか?」
 そう問いかけたら、杉並のチャンドラ・ボーズの墓参りを希望したのを思い出す。
 これからインドを目指す人には、ぜひこの「チャンドラ・ボーズ」という名前を覚えておいていただきたい。(p.45)
   《参照》   『新しい世界観を求めて』 佐高信・寺島実郎 (毎日新聞社) 《後編》
             【戦後日本にとってのインド】

 

 

【ヒンディー語は日本語と文法が同じ】
 「日本語は覚えやすいの?」
 「ヒンディー語と文法が同じなので、英語に比べると覚えやすいですよ」(p.224)
 勉強を始めてまだ半年なのに日本語が上手なインド人がこう言っていたという。
 韓国人も日本語の上達は非常に速い。

 

 

【コンドミニアムに住むなら】
 困ったのは、そのエレベーターが頻繁に止まってしまうことだ。そう、インドでは停電が当たり前なのである。 ・・・(中略)・・・ そんな経験から、コンドミニアムに住むのなら、2階くらいの低層階に住むことをお勧めしたい。(p.85)
 海外の住宅ではどこであれ良く聞く話だけれど、新築だからといって日本のように完璧ではないのが普通。

 

 

【星占いの結果は絶対】
 インドでは、開所式をはじめとしたおめでたいイベントの日取りを星占いで決めるところがある。・・・(中略)・・・ 。
 この星占いで「吉日は1年後」と出たのである。そのため、開所式は完成から1年間待たねばならなかった。 ・・・(中略)・・・ インドでは星占いの結果は絶対なのである。(p.93)
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   《参照》   『インドの科学者』 三上喜貴 (岩波書店)
             【精神の自由を拘束する心の内なるタブー】