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 公共図書館にあった本。読後にまとまった印象が残らない。タイトルから一般人が想像するような内容が書かれている訳ではない。著者はデンソーの研究者さんで、プロフィールには、自動車用半導体デバイスの草分けと書かれている。その分野の専門書にしては中途半端だし、関連する分野の進化状況が体系的に書かれているのでもなく、部分的なポイントですら分かりづらい書き方なのである。2005年6月初版。
 

 

【新たなカーエレクトロニクスの世界】
 1990年代初頭からシリコンに比べて電気的な損失が大幅に低減できる可能性を秘めたシリコンカーバイド(SiC)半導体の研究が本格的に進められてきた。近年になって結晶欠陥を含まない良質のSiCの結晶成長技術が開発されるにいたり、画期的な低消費電力デバイスとそれを用いたパワーエレクトロニクスに強い期待がかけられている。新たなカーエレクトロニクスの世界が切り開かれるに違いない。(p.112)
 p.87 には、2004年に高品位なシリコンカーバイト単結晶の作成技術が豊田中央研究所とデンソーの研究者によって開発されたと書かれている。
 車に使われる半導体は、高熱下や高電圧下で誤作動を起こさないという条件が必須であるため、通常の家電やPCで用いられる半導体をそのまま使用することはできない。だから、トヨタやデンソーのような自動車関連メーカーは、独自に電子制御部品(半導体)の開発を行ってきたのである。

 

 

【エレクトロニクスへの依存度を高めている自動車】
 今後、21世紀型の自動車に向かって一段上の進化を遂げようとするとき、エレクトロニクスへの依存度はとどまるところを知らない。 ・・・(中略)・・・ いまでさえ高級自動車に搭載されているマイクロコンピュータの数はすでに50個を突破しているのである。
 ガソリン車の原価に占める電子製品の割合は平均で22%。トヨタ車に搭載されている電子部品の総事業規模はソニー、松下、日立に次いで第4位といわれている。(p.69)
 車には思った以上にたくさんの電子製品が使用されている。ハイブリッド車になればそれはさらに多くなるのだろうけれど、半導体を駆使することで従来のガソリン車やディーゼル車であっても燃費を向上させることができるのである。その主なものが下記の二つ。

 

 

【「可変気筒エンジン」と「圧縮比可変制御エンジン」】
 可変気筒エンジンは、走行負荷に応じて作動気筒の数を変え、必要最小限の燃料消費で運転できるエンジンである。圧縮比可変制御エンジンは、走行時の負荷に応じてピストンの上死点位置を変えることによって気筒内の燃料の圧縮比を変え、最小の燃料で最大トルクを出すことができるエンジンである。いすれも機構部の精密な動作制御を必要とするエンジンであり、コンピュータ制御エンジンの最たるものである。(p.36-37)
 「可変気筒エンジン」 は排気量の大きな車向きであり、「圧縮比可変制御エンジン」 は小型車用である。
 1週間ほど前、「ハイブリッド車並みの、リッター35km走行可能のガソリンエンジン軽自動車が、80万円台で販売が開始される」 とテレビで放映されていたけれど、その車のエンジンこそが 「圧縮比可変制御エンジン」 だった。この軽自動車は爆発的に売れることだろう。
 ディーゼルエンジン車の電子制御は、コモンレールに用いられているけれど、「可変気筒エンジン」 をも併用すればさらに燃費が良くなるのかもしれない。
   《参照》   『デンソー』 大河滋 (マネジメント社)

            【小型ディーゼル用コモンレール】

 
<了>