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 絶対音感があればどんなメリットがあるのだろうかと思いつつ読んでみた。ついでに、ドレミファソラシドがイタリア語であることを、この本を読んで初めて知った。

 

 

【「絶対音感」とは?】
 絶対音感は英語で〈absolute pitch〉と表現し、直訳すると 「絶対的な音の高さ」 といった意味になる。
 ・・・(中略)・・・ 
 この言葉を定義すると、以下のようになる。
 「音を相対的に把握するのではなく、ピッチ(周波数)ごとに厳密に聞き分ける能力」 (p.19)
 周波数の単位はヘルツ。
 因みに1オクターブ上の音は、周波数は2倍になる。
1オクターブを平均律で12等分した個々の周波数ごとに音を聞き分けることができる能力のことを絶対音感というらしい。簡単に言えば、音に関する “デジタル頭” ということだろう。

 

 

【オーケストラの標準音】
 オーケストラの演奏前には、通常、オーボエの音に合わせて全員の楽器を調整する、先ほど触れたとおり、440ヘルツの音がA音となる。(p.25)
 ところが、オーケストラによって標準音が442ヘルツだったり446ヘルツだったりするのだという。
 440ヘルツで絶対音感をつけた人は、それ以外の基準音を容易には受け入れられず、新たに耳を鳴らしていかなければならない。だから、海外へ出て活躍しようとする音楽家は苦労が予想される。もっとも多少のずれがあっても大丈夫という、ゆるやかな絶対音感を持っている人はこの限りではない。(p.26)
 標準音付近を平均律で換算した1音の周波数は、440÷12=36.66・・・ になる。ならば、6ヘルツの差は16%程度のズレになり、 ”それくらいなら許容誤差の内に入るんじゃないの?” と思うけれど、絶対音感保持者は数ヘルツの差でも聞き分けて違和感を持つというのであれば、“つまり、それって融通のきかないアホな機械みたいなもんじゃん” などと素人のチャンちゃんは思ったりする。
 絶対音感には、 “功罪” の両面があるはずであるけれど、この本には、本質的な “罪” の部分が記述されていないから、下記の書籍をリンクさせておく。
   《参照》   『三位一体モデル』 中沢新一 (東京糸井重里事務所)
               【合理化】

 

 

【絶対音感のメリット】
 通信カラオケを担当している方の意見。
 「絶対音感を持っている人は、この仕事をこなす上では間違いなく有利だと思いますよ。絶対音感がなくても仕事はできますが、あれば、いちいち楽器や機械などで音を確認する必要がないですからね。 ・・・(中略)・・・ 」 (p.65)
 ミュージシャンの場合。
 ライブになると、バックなしで歌うときがあるんですが、普通は前の歌のキーが頭に残っていると歌えなかったりするものなんですよね。そんなときでも大丈夫なんですよ。だから 「よく歌えるな」 ってメンバーに感心されますね。(p86)
 まとめとして、
 音楽を勉強している人は 「受験に役立った、楽勝だった」 「ソルフェージュの授業が楽になる」 「暗譜が早い」 などの回答が多くみられた。
 仕事で音に携わっている人は 「とにかくいろいろ便利」 「耳コピがラクにできる」 「作曲するのに楽器を使わなくても平気」 などがあった。(p.145)

 

 

【絶対音感の呪縛】
 「何を聴いてもドレミ、生活音までドレミでした。歌詞は聞き取れず、ミファソミレ・・・と音名でしか聴こえないんです。いま思えば当時は、ピアノをただ機械的に弾いていただけなのかもしれません。心がこもっていなかったような気がします」 (p.127)
 本でも読むように歌詞ばかり聞き取ろうとする人は、言葉というロゴスに囚われて、曲全体を感受することができない。絶対音感に呪縛されている人は、音のロゴスに囚われて、やはり曲全体を感受することができない。

 

 

【練習開始時期】
 絶対音感を身につけるためには、遅くとも6歳半ぐらいまでに練習を始めなければならないんです。この時期を逃すと、絶対音感を習得することが極めて難しくなりますね。そのかわり、適切な時期に練習を始めれば、殆どすべてのお子さんが絶対音感を身につけることができます。(p.174-175)
 胎教に関しては、6カ月目くらいから聴覚が芽生えはじめ、8カ月目で完全に機能するようになるという。絶対音感にこだわらなくても、音楽的センスの多くは胎児期にほぼ定まってしまうのだろう。

 

 

【絶対音感の副産物】
 「絶対音感を身につけることによって、音楽以外にも効果があることが分かっています。音感がつくと耳の感覚が良くなるため、難しい発音なども瞬時に聞き分けることができ、語学の習得が著しいということです」 (p.184)
 語学と聴力の比例関係は、普通に考えても首肯できるけれど、養老先生の本に、女性は男性に比べて語学的な才能に秀でていると書かれていた。
   《参照》   『記憶がウソをつく!』 養老孟司・古館伊知郎 (扶桑社) 《前編》
              【男と女の脳の性差】

 ということは、男性より女性の方が一般的に音楽的才能に秀でていると言えるのだろう。

 

 

<了>