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 タイトルが気になって読んでみた。著者は、朝鮮固有の丹学という人間開発法を基に実践している方らしい。
 意識の使い方や修練の途上で生じる事態などは、密教系の法を体験している人々にとっては理解しやすいだろうけれど、意識を直接脳に向けるその手法は斬新である。これも、脳科学が進んで脳の構造が分かるようになった現在だからこそ出来ることで、より具体的に意識を脳の特定部位に向けるべく、試してみる価値があるだろう。99年8月初版。

 

 

【人類の限界認識】
 分析や批判などといった理性的なメスでは、それがいくら鋭くても人間とこの世が抱える諸問題の根源をなくすことは決してできません。何か新しい対策が、切実に求められている時代なのです。
 こうした限界認識により、人々は能力評価の基準を 「IQ(知能指数)」 よりは 「EQ(感性指数)」、もしくは 「MQ(道徳指数)」 に置くようになっています。左脳の能力を重視したIQ時代には、有能であっても自己中心的な人間を量産しました。しかし、右脳の能力に高い価値を与えるEQ時代には、創意力と調和性などを兼ね備え、人間関係に適した人物が求められているのです。さらにMQの高い人は、意識の範囲を人類全体に拡大し、自分が人類のためにどのように貢献できるかを考える意識構造を持っています。(p.7)
 人類の行き詰まりを指摘するのは、エソテリック(密教的)な手法を知っている人々に共通することである。七田式の右脳開発法もエソテリックな手法を取り入れたものであるし、ファンタジーものの映画やPCゲームが世界的に盛んになっている状況も、間違いなく人類の限界認識に関与していることである。
 修練が深まれば、われわれの意識が宇宙の情報が貯蔵されている宇宙の脳と繋がります。 ・・・(中略)・・・ 。三次元的な人間の意識の限界を超えて宇宙の意識と一つになる経験をしないことには、MQの本当の意味を理解することもできないし、MQの向上も望めません。(p.63)

 

 

【「真気」を活用する脳呼吸】
 意識を集中させることにより、深い内部意識に入り、生命の実態である 「気」 の流れを感じながら行う 「脳呼吸」 は、頭脳の全体的な啓発と人間の持つ本生の発見を可能にする修練法であり、いともたやすくかつ確実にEQやMQの向上を図ることができる方法なのです。(p.7-8)
 意識を集中した時、意識による心波と体の精気が一つになり、新しい次元の気である 「真気」 を発生させます。
 「真気」 は、意識を移すことにより発生する気です。意識を手に移すと手に気が生じ、意識を脳に移すと脳に気が発生します。たとえば、手に意識を集中させると手が熱くなるのを感じます。体温計で手の熱を計ってみると、実際に手が熱くなっているのを確認することができます。この時に発生する熱も、「真気」 の一種であると言えます。(p.38-39)
 両手の平を向かい合わせて、意識を向けるとすぐにピリピリ感じる人は多いらしいけれど、こういったことは繰り返し意識を向けて実践していれば誰でも必ず感じるようになる。
 著者は、意識を直接脳に向け、そこで発生する 「真気」 によって脳の歪み改善や活性化に役立てようとしている。

 

 

【脳呼吸の目的】
 脳呼吸の目的は、脳の気と血液の循環を促進させることによって、本来の健康を取り戻すことです。脳には、身体の各部位をコントロールする中枢や神経が集まっているため、脳が健康になれば身体全体が健康になります。これが、まさに脳呼吸をする第一の目的なのです。(p.49)

 

 

【脳呼吸の効果】
 脳呼吸は、気を利用して脳細胞を振動させたり、脳を膨張・収縮させることにより、脳全体を運動させます。そして、生命力に満ちた宇宙の生命エネルギーを脳に供給します。そうすることによって、脳細胞の老化を防ぐばかりか、脳の委縮した部分をきれいに復元するなど、脳の構造的な問題を矯正することもできます。そして、結果的には脳が健康になり、脳の機能が正常化して情緒的にも安定してくるのです。(p.64)
 脳に酸素を供給することによって痴呆症をはじめとする各種脳疾患が予防できるのです。(p.66)
 いいことずくめである。
 痴呆症が改善したというような体験談が載せてあればいいのに、それはない。
 脳呼吸によって効果を期待できる理屈はわかるけれど、痴呆症は、すべて脳の委縮や酸欠が原因で起こっているわけではないだろう。それらは原因ではなく結果の場合もある。その場合はスピリッチュアル(霊的)な原因があるはずである。そう言ったことに関する記述が全くないのが、この著作に関して、ちょっと気になるところである。

 

 

【確信の境地】
 気を移送させる脳呼吸は、つまり心を使う訓練だと言えます。気を動かすのは心だからです。脳呼吸に臨む時に必要なのは、自分の中に無限の神性が存在していると信じる姿勢です。それは万事、自分の心次第であるという確信の境地であり、これまで経験したあらゆる観念を消し、そこに新しい価値観を花咲かせる想像の境地なのです。脳呼吸によって、これまで誤解してきたことがきちんと整理され、不可能であると思い込んでいた領域への可能性を新たに見い出すことができます。これまで使ったことのない体や脳の機能を活用するのです。(p.67-68)
 ここには、全ての人々が人生で使えるテクニックのエッセンスが記述されている。

 

 

【実践 : いとおしみながら脳に呼びかける】
 心の中で脳を見ながら、愛する人の名前を呼ぶような気持で、脳の中の各部位を何回ずつか呼んでみてください。心のあるところに気があるというのは、全宇宙のエネルギーの法則です。「大脳」、「小脳」 とその名前を1つ1つ、いとおしみながら呼ぶと、集中しやすくなるに違いありません。(p.89-90)
 “心のあるところに気があるというのは、全宇宙のエネルギーの法則です” というのが第1のポイント。
 そして、心がどんな気を送っているかが、第2のポイント。
 誰かが自分の名前を親しみを込めて呼んでくれたり、関心を持ってくれると気持ちがよくなります。そのような感覚は、人間だけのものではありません。この宇宙に存在する万物が愛されることをのぞみ、関心をもってくれることを期待しているのです。人間の体もやはりそうなのです。主人の呼び声に脳細胞は感動し、振動し始めます。新たに目覚めるのです。五感のスイッチを消して静かに内部意識を集中すると、脳細胞がどんなに喜んでいるかがわかるはずです。(p.94)
 

【実践 : 脳を膨張させ磁場を作り、形を変える】
 イメージを使った修練のいくつかを書き出しておく。
 修練しているときでも、自分の脳が膨張し、磁場が作られていく様子を頭の中に描き続けてください。言葉は要りません。脳が膨張し、磁場が作られるシーンをアニメーションを見るように思い浮かべてください。
 何かを思い浮かべると、人間の脳はコンピューターのようにそれをすぐ脳にインプットすることができます。脳はインプットすると同時に、脳の構造は絵の通りに変わってきます。魔法のようですが、複雑な構造の中に非常に精巧な回路を持った人間の脳の神経体系は、その驚くべき技をあっという間に処理してしまうのです。(p.112-113)

 このようにして、想像上で脳の形を変えるのです。たとえば、縦に長い顔を小さくしたい人は、顔を水平に伸ばす修練を粘り強く続けてください。
 脳の形と性格には密接な関係があるため、顔の形の矯正だけでなく、性格の欠陥までも直せます。脳に意識を集中し続けながら、脳のあちこちをいじってください。気で脳の形や位置を正し、脳の中をマッサージします。(p.116)
 スポーツの世界でイメージトレーニングは活用されているけれど、これは勿論のこと病気治癒にも使える。
 コンピュータ・ゲームの大好きな少年がガンに罹っていることがわかり、お医者さんが、「君のココにガンがあるんだけれど、君の好きなコンピュータ・ゲームのイメージで、ココのガンにミサイルを撃ち込んでやっつけちゃいな」 と教えたら、本当に治ってしまったという事例を他の本で読んだことがある。
 そんな、確信力を伴ったイメージ力を、自分自身の脳に向けて、自分自身を改善できるというのは、非常に魅力的な方法である。

 

 

【笑いの運動量】
 笑うことは全身運動ですから、実は5分間の笑いが5時間の運動量よりも勝るのです。(p.105)
 そんなにすごいとは知らなかった。60倍の運動効果ということになる。

 

 

【眠いときはブレインボタンを押す】
 鎖骨のすぐ下の一番上の肋骨と二番目の肋骨の間で胸骨の左右にポコンとへこんでいるところをブレインボタンと呼びます。 ・・・(中略)・・・ 。
 初めは、痛みを感じることもありますが、一週間ほど過ぎれば痛みもなくなります。それからは、その部位をぎゅっと押すだけで脳が活性化することができます。(p.157-158)
 さっそく押してみたら、かなり痛い。しばらくはこんな感じなんだろう。

 

 

【脳は退化しない】
 脳細胞はこれまで、生後2,3年のうちにほぼ成長し終え、その後は退化する一方だと考えられてきた。しかし、1998年12月号の 『ネイチャー』 誌によると、70歳を過ぎても成長し、脳細胞は減少しないことがわかったという。成長するのは、脳細胞ばかりではなく、神経細胞もだという。これは今世紀最大の発見のひとつだという。
 ところで、脳細胞の成長を促すのは、体をよく動かすことと呼吸法(とくに深呼吸)、そして早朝の紫外線の少ない日光を浴びることだという。(p.225)
 「年取ったら脳は老化するもの」 と思い込んでいる人だけが、その思い込みに則して老化するだけである。
 ボケないためには、なんといってもあの手この手を使って脳を使い続けることである。

 

 

<了>