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 小学生とそのお母さんが一緒に読めばいいような環境問題の本。いや、環境問題+心学の本として読んだほうが有意義かもしれない。2005年11月初版。

 

 

【クリキンディの物語】
 この物語は、南アメリカの先住民に伝わるお話です。

 森が燃えていました。
 森の生き物たちは、われ先にと逃げていきました。
 でもクリキンディという名のハチドリだけは、
 いったりきたり、
 くちばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは、火の上におとしていきます。
 動物たちがそれを見て 「そんなことをして、いったい何になるんだ」
 といって笑います。
 クリキンディは、こう答えました。
 「私は、私にできることをしているだけ」 (p.3-13)

 

 

【監修者のあとがき】
 クリキンディが水のしずくを一滴ずつ落とすように、ぼくたちには 「自分にもできることがある」 という小さな希望の芽を、周囲からの励ましを栄養としながら自分のうちに育てていくしかありません。時間がかかります。スローなんです。近道はありません。それでもいいのです。(p83)
 クリキンディの行為にならった真っ当な記述なのだけれど、 “こんなまとめでいいのだろうか” と思ってしまう。
 25~57ページにかけて書かれている16人の “私は、私にできることをしている” の方が、それぞれに、ずっと冴えているように思える。

 

 

【私は、私にできることをしている】
 16人の “私にできること”が、それぞれの方の写真付きで簡略に書かれている。
 共通しているのは、怖れたり心配したりせずにポジティブであるということ。
 例えば、
 中嶋朋子(女優)
 エコロジーはがまんすることじゃない。
 私たちが欲している心地よさや楽しさは、地球と仲よくつながっているはず。(p.30)
 自閉症児が心を開いてゆくイルカの飼育センターでのこと。水を怖がっている中嶋さんに、イルカはよってこなかった。指導員に 「イルカより楽しそうにしていないと寄ってきてくれないよ」 と言われ、楽しさを全身で表わしてみた。するとすぐに野生のイルカが遊びに来たという。
 こんな経験から、上記のような考え方をもつようになったらしい。
 怖がる心は、全体を害っている。愛の反対側だからである。
 楽しい心は、全体を招くのである。愛に近いからである。
   《参照》   『ゆるすということ』 ジェラルド・ジャンポルスキー(サンマーク出版)
              【愛の反対側】
 ウ・オン(ミャンマーの育林家)
 毎日、「私の善き行いが、9千万の陸の生き物と1億の海の生きものとに、ひとしく健康と幸せをもたらしますように」 と祈ります。(p.44)
 心配している時間があったら、その分、ウ・オンさんのように、幸せを祈ったほうがいい。
 心配ほど、有害な心の使いかたはないことを自覚していないなら、愚か過ぎである。
 それは、地球を害する側。
   《参照》   『心の持ち方』 ジェリー・ミンチントン (ディスカバー)
             【心配しない】

 

 

【ハチドリではなく人間なのだから】
 ハチドリのクリキンディは、実践することを教えている。
 霊長類の人間は実践もできるけれど、実践以上に大きな影響力を発揮する “心の力” をもっている。
 “心をどう使うか”、これが重要である。
 
 
<了>