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 さまざまな歌舞伎の演目が、サンリオキャラクターの演出とともに、若者向けに紹介されている。

 

 

【道成寺】
 正式なタイトルは 『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうしょうじ)』 という。
 ヒロインのお姉さんのことが、以下のように記述されている。
白拍子花子
 道成寺の鐘供養にやってくる白拍子(踊りこのこと)。娘から大人の女性まで、様々な女性の恋心を巧みに踊ってみせる名ダンサー。ところが踊るうちに徐々に正体を現す。実は彼女、清姫(振られた男を追い回す、元祖ストーカー)の亡霊で、最後には蛇の姿になってしまう怖い女性。
 この清姫ちゃん、花子の姿だけでなく、奴の姿になったり(『奴道成寺』)、大津絵(江戸時代の漫画の一種で、藤娘・鬼の念仏などのキャラクターがある)の登場人物になったりと、死んでからもまさにこれでもかのストーカーぶりを発揮する、ウザいお姉さまキャラである。(p.10)
 いまどきの高校生くらいの若者たちに興味を持ってもらえるよう、分かりやすくということなのであろうけれど、なんという人物紹介であることか。
 とはいえ、歌舞伎の語源となった “傾(かぶ)く”には、そもそも流行の先取り的な意味合いがあるから、当時の歌舞伎には若者の嗜好とて大いに反映されていたはず。 だから、今日では伝統芸能といわれる歌舞伎が、こんな風に紹介されていても決して邪道とはいえない。

 

 

【爪先鼠】
 金閣寺(正式なタイトルは『祇園祭礼信仰記』)の中の一番の見せ場が 「爪先鼠」 と呼ばれる場面。
 桜の木に縛り付けられた雪姫が爪先で桜の花びらを集めて鼠を描き、その鼠に魂がやどり動き出して縄を食い千切る通称 「爪先鼠」 とよばれる場面です。この場面は、桜の花びらが舞い散る中、縛られているお姫様という、まさに 「動く錦絵」 という表現がピッタリの非常にきれいな場面なのです。(p.42)
 平安時代の陰陽師・安倍晴明ならやりそうなことが、江戸時代の大衆芸能の歌舞伎の中にも取り入れられていた。歌舞伎の演目の中には、このようなやや呪術的な要素を持つものが少なくない。
 ちなみに雪姫は、著名な画家・雪舟の孫娘という設定になっている。

 

 

【歌舞伎の分類、 「荒事」 と 「和事」 】
 知らざぁ言ってきかせやしょう。
 江戸時代の中頃、元禄時代に関東と関西に、市川団十郎、坂田藤十郎という、それぞれ素晴らしい名優が誕生します。江戸の市川団十郎は 「荒事」 (現代風にいうと、スーパーマンのようなヒーローもの) を創始して大活躍し、上方の坂田藤十郎は 「和事」 (いわゆるラブストーリー) で大人気のスターとなります。この二人によって現在の伝統演劇 「歌舞伎」 が作られたといっても過言ではありません。(p.4-5)

 

 

【歌舞伎の種類】
 知らざぁ言ってきかせやしょう。その2
● 時代物
 江戸時代以前に、時代設定をした芝居のことで、・・・中略・・・、古代から鎌倉・室町時代の貴族や武士・僧侶などが主人公となる芝居です。
● 世話物
 江戸時代(当時としては現代)の町人の世界を描いた芝居のこと。
○ 歌舞伎舞踊
 浄瑠璃や長唄、清元や常磐津をバックミュージックに役者さんが踊りの技を見せるものです。特に能や狂言を歌舞伎に移したものを 「松羽目物(まつばめもの)」 と呼びます。(p.43)
 道成寺も 「松羽目物」 である。

 

 

【日本舞踊】

 「かぶき」 の 「ぶ」 (舞う) の部分が派生して、独自の展開をしたのが日本舞踊です。 「日本舞踊」 が伝統芸能としてとらえられるようになったのは、あまり古くなく、第二次世界大戦後のことだと考えられています。それまでは茶道、華道などと同様に 「生活芸能」 と考えられていました。

 学生だった頃、「にちぶ(日舞)をやっています」 と言われて、何のことだか分からなかった。 「何で省略すんの? ちゃんと日本舞踊と言ってくれたらわかるのに」 である。
 人によっては着物を着ることで大いに化けることがある。キティーちゃんは着物を着てもキティーちゃんであることがバレバレである。化け猫ではない。コッテコテのキャラクター猫である。でも、人間の場合は、着物を着ると、姿も所作も良い方へ化けられる可能性は高い。
 真っ白の白粉を壁のように塗りたくって艶やかな着物を纏った写真なんぞを一枚撮って持っていたら、性格なんてあっちの世界ごととして、外国人には大うけすることだろう。
 
<了>