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 先に書いた 『世界でいちばん大切な思い②』 の最初版が書庫にあったのを見つけたので、読んでみた。
 12話の短い物語が記述されている。全て実話だという。親孝行な話が殆どである。韓国の家族に生きている儒教精神の良いとこばっか。タイトルの主旨に合わせて、チャンちゃんのノー天気なコメントは書くまい。
 12の物語の中では、「世界でいちばん美しい姿」 がおそらく最も多くの人々の胸を打つのだろう。
 他の短い1編 「のろなまバス」 を掲載しておく。

 

 

【「のろまなバス」】
 でこぼこ道を、町へ行くバスがやってきました。このバスの運転手は、何年もずっとこのバスだけを運転してきました。だから、バスが通る村のことや、バスを利用する人たちのことは、誰よりも知っていました。
「ああ、どうしよう。バスが行ってしまう」
 おばあさんが、はあはあ息を切らしながら、バスに向かっていました。バスが出発しようとしたとき、乗客の1人が大声で叫びました。
「運転手さん、ちょっと待って。おばあさんが乗りたいようですよ」 
運転手の目にも、荷物を抱えたおばあさんの姿が写りました。あばあさんは、一生懸命バスに向かっていました。でも、なかなか近づいてきません。いつまでたっても出発しないバスに、しびれを切らした乗客が、大声で文句を言いました。
「早く出発させろよ。いつまで待ってんだ」 
運転手は静かに言いました。
「お客さん、すみません。実はうちのおふくろなんですよ」
「うーん・・・」 
文句をいった乗客は気恥かしくなって、口をつぐんでしまいました。そのとき、青年が突然立ち上がりました。乗客の視線が彼に集まりました。青年はバスを降りると、おばあさんのもとへ走っていきました。
「おばあさん、荷物はぼくが持ちますよ」
「あら、ありがたいね・・・」
「バスは大丈夫ですよ。ほら気をつけて」
 荷物を手にした青年とおばあさんがバスに乗ると、拍手が鳴り響きました。乗客はみんな知っていたのです。そのおばあさんが運転手の母親でも、青年の母親でもないことを。  (p.62-65)

 

 

【訳者あとがき】
  韓国の芸能界で仕事をするようになって2年が経ちました。・・・中略・・・。韓国の人って本当に両親を大切にするんですよ。「お母さん愛してるよ」 って口に出して言っちゃいますからね。何かをするときには、必ずと言っていいほど両親に相談しています。負けないくらいに友人との付き合いも。日本ならもう少し距離を置くのになあって感じるくらいに。
 ・・・中略・・・。
 この2年間くらいの生活で、韓国の両親を大切にする気持ちや友人を思いやる気持ち、それもこころに思うだけではなく、ちゃんと行動に表す姿にふれ、私自身も変わりました。変わったというより本当の自分になれたような気がします。それまでは、自分のことは自分で決めていた私が、両親によく連絡するようになりましたし、帰国したときは以前よりもやさしく接するようになりました。
 訳者の笛木さんのようになりたい人は、この本を読めばいい。
 
<了>
 

  パク・インシク著の読書記録

     『世界でいちばん大切な思い』

     『世界でいちばん大切な思い②』