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 辞書風の読み物。エピソードが少ないので、衣服にそれほど興味があって読んでいるわけではない人には退屈な本だろう。私にしても同じである。そこにあったから読み始めたという以上の理由はない。
 そうではあっても、衣服にかかわって知らないことはいくらでもある。それを書き出すだけ。

 

 

【古着屋の元祖は盗賊】
 東京・中央区の日本橋に富沢町という地名がある。もともと、ここは鳶沢町と呼ばれた。鳶沢甚内という男が、ここで古着屋を始めたことに由来する。その男、実は盗賊の親分だったとか。
 御用になったこの男、・・・中略・・・、世に盗人が絶えぬのは、彼らに仕事がないからだと幕府を説き、幕府より商売のための土地を払い下げさせ、店を構えて子分たちに古着屋の商売をさせたというのだ。(p.9)
 仕事の安定雇用は、犯罪社会を抑止するための最も基本的な対策である。現在の雇用状況で、貧富の差が広がるばかりであれば、富者から奪い貧者に与える義賊がヒローに成ってしまうだろう。

 

 

【幣と弊】
 「幣」 はささげ物の布のことを意味し、通貨として使用された布のことをいった。つまり金属製貨幣の代用であった。貨幣・紙幣にその意は見られる。
 「弊」 は古くなって破れることをいい、たとえば弊衣破帽というのは、旧制高校の学生の間で流行った破れた衣服と破れた帽子のことをいう。 (p.25)
 へ~。

 

 

【化粧回し】
 当時、力士の多くは大名のおかかえで、大名たちの見栄の張合いもあって、次第に派手になっていった。とりわけ、紀州徳川家の殿様がすばらしい 「化粧回し」 を贈ったので 「紀州回し」 と呼ばれ、それが訛って 「化粧回し」 というようになった、ともいわれている。 (p.61)
 貴乃花・若乃花が二人兄弟が横綱だった時、それぞれに黒地にクッキリと配された日輪・月輪の化粧回しをしていたように記憶している。一見してとても印象的だった。私が記憶している化粧回しは、後にも先にもこれだけである。
 ところが、この化粧回し、大相撲のフランス巡業の際、空港の貨物火災という理由で、力士すべての化粧回し共々失われてしまったのではないだろうか。今時、航空貨物の火災など到底信じられず、「フランス人による公然のカッパライだろう」 と今でも思っている。

 

 

【唐草模様】
 蔓草を図案化したデザインをいう。風呂敷などによく見られた図柄だが、生まれは日本ではなくエジプトである。古代エジプト時代、ロータス(睡蓮の仲間)を図案化した模様を 「唐草模様」 といった。
 「唐」 は当て字で 「絡み草」 の略である。
 紛らわしい当て字!

 

 

【要領がいい】
 「要」 は、もともと腰を表す象形文字。・・・中略・・・。「領」 は襟首のことを指す。つまり、大切なところ。転じて物事の基本となる最も重要な部分をいう。
 また着物を持つ場合も、この2か所(腰と襟)を持つので主だったところを指すようになった。したがって、要領がいいは大事なところを心得ている、いうなれば、つぼをつかんでいるということだが、あまりいい意味では使われていないようだ。 (p.92)

 

 

【綺羅星の如く】
 綺羅とは、綾絹(いろいろの模様を地に織り出した絹)と薄絹のことで、転じて美しい衣服をいう。そんな絹の衣装で、星のようにあでやかに輝いて見える、つまり立派な人たちが居並ぶこと。「綺羅、星の如く」 から。(p.93)
 昔からケバイ連中がいたらしい。

 

 

【被く】
 これ 「かずく」 と読む。 
 猫被りは読めても、これは読めなかったから書き出しておいた。
 古語で頭に被せるの意 (p.136)

 

 

【花色木綿】
 花色とあるから赤かピンクの色と思いがちだかれど、紺色。
 「縹(はなだ)」という藍(あお)い露草が語源で、はなだ色が花色にかわった。(p.149)
 「縹」 とは 「露草」 の別名。
 そういえば、観測史上前例ない日曜日(2月16日)のバカ陽気で、家の近くの露草がもう咲いている。
 梅は満開である。
 
<了>