以前のブログの中に一部書いておいたことではあるけれど、メディア社会の大きな流れを学生に伝えるために、まとめておいた。

 

 

【地デジ(地上波デジタル放送)について】
 最近、テレビで「2011年7月をもってアナログ放送が終了します」、というコマーシャルが頻繁に流れています。現在は、アナログ放送とデジタル放送が並存し、各テレビ局は2つのチャンネルを持っていますが、2011年7月以降は、どのテレビ局もデジタル放送のチャンネルのみに一本化されます。
 なぜ地デジ化するのかというと、携帯電話の普及によって使用可能な電波の帯域が不足してきたため、テレビ電波用の帯域を限られた範囲に限定するのが目的ということのようです。 (専門的なことを知りたい人は、UHF , VHF といった専門用語をもとに、自分で調べてみてください)
 コンピュータは元々デジタル方式でしたから、テレビがデジタル化されることによって、テレビとコンピュータは必然的に統合(メディア・ミックス)される方向に進むのです。


【マルチメディア社会】
 さて、テレビは従来からアナログ方式で機能する電気器具でした。皆さんが生まれた1990年頃は、21世紀のテレビが、アナログのまま進化するのか、デジタルに乗り換えて進化するのか、世界の動向は定まっていませんでした。NHKは、HDTVというアナログ技術を進化させた最先端技術の高品位テレビを、世界市場に向けて提示していたのです。
 しかし、18年後の現在、世界のテレビはアナログ化をやめて、デジタル化することが決まっています。これは、文字、音声、画像、動画を同時処理できるようになったデジタル技術の進化と共に、マルチメディア社会へと変遷してきたことと深い関係があります。
 マイクロチップの進化と光ファイバーの出現によって、格段に処理能力を高めたコンピュータは、テレビ以上にマルチメディア社会の中核を担うようになっていたのです。


【マイクロチップの進化と光ファイバーの出現】 
 かつて真空管を用いていた頃のコンピュータは1台をつくるのにビルディングほどの容積を必要としました。しかし、江崎玲於奈博士の発見した半導体の技術が元となったマイクロチップが高度に集積化すると、ビルディングほどの容積を必要としたものが、わずか数ミリのマイクロチップの中に収まってしまうようになりました。同時に多量な情報を高速に処理できるようになったのです。
 また、光ファイバー(シリカ繊維)は、現在のメタル回線(銅のケーブル)や通信衛星の何千倍という量の情報を伝達することができるそうです。
 情報量は、文字<音声<静止画像<動画像 という順番で桁違いに大きくなります。20年ほど前、日本で売られていたPCは、英数字と半角のカタカナしか打てませんでした。情報の処理能力が極めて小さかったのです。現在皆さんが授業で使っているコンピュータは、当たり前のことのように動画を綺麗に表示することが出来ます。コンピュータ自体も、コンピュータをつなぐケーブルも多量な情報を高速処理できるようになっており、デジタル機器として進化してきたコンピュータは、動画像を専門に扱うテレビの情報処理能力を遥かに上回るようになりました。


【メディアの統合化は可能】
 このような状況下で、テレビがアナログからデジタルに移行するわけですから、コンピュータとテレビは一体化するのが必然なのです。テレビがコンピュータに飲み込まれて、世界から消えてなくなってしまう、というわけではありませんが、コンピュータを購入すれば、別途テレビを購入する必要はなくなるのです。
 既に、技術的に、インターネット、電話(音声情報)、ファクシミリ(文字情報)、テレビ(画像情報) がすべて同一回線で処理できるようになっています。しかし、現在は、各媒体の所有会社がバラバラのままなので、それぞれの会社に基本料金(使用料金)を支払わざるをえません。
 おそらく日本の一般家庭では、ケーブル・テレビ契約料として3000円、NTT基本料2000円、プロバイダー使用料4000円、合計額でおよそ1万円にも及ぶ月額料金を支払っているはずです。しかし、技術的には1本の回線で全て利用可能なのですから、これらが一社に統合されたならば、利用者の経済的負担は半分以下に減らせるはずです。


【メディア統合化の問題点】
 しかし、私たちの自由主義社会には、メディアの所有者に独占的に情報をコントロールさせないために、一人の人物が複数メディア (例えばテレビ放送会社とラジオ放送会社) を所有してはいけないという規制があります。
 マルチメディア社会は、個人が出来るだけ経済的に、あらゆる情報を自由に扱うことを可能にする社会なのですが、その自由度を高めようとすればするほど、ごく限られたメディアの所有者に情報を支配される可能性が高くなってしまうのです。マルチメディア社会は、このような矛盾を内包しています。 「両刃の刀」 なのですね。
 
 
以上