イメージ 1

 有機循環農法に行き着くまでの体験的遍歴過程が綴られている。1993年初版でその後も版を重ねているから、広く継続的に読まれているのだろう。
 これを読んだからといって、有機循環農法をすぐに実践できるような具体的な記述はない。それらは、著者の経営している農場で学んでほしいということのようである。 農業以外の記述の中に興味深いものある。

 

 

【有機農法の否定=商業資本の侵略】
 有機物を入れてないので、土が痩せて固まってくると、クワだけでは耕せなくなります。そこで、耕運機や、トラクターが必要となり、あまりたくさん金を必要としなかった農家が、貨幣経済に巻き込まれていきます。商業資本に侵され、金がなかったら一日も生きてはいられないような状態に巻き込まれていきます。 (p.275)
 「農民は、機械化により過酷な肉体労働から解放された」、という側面だけが語られるけれど、多くの農家が借金返済のために農作物を栽培することになる、とうい現実はあまり語られない。
 高齢化すればするほど、肉体労働はきつくなるから、施肥も化学肥料を購入して簡単に済ませたくなる。有機農法の否定=商業資本の侵略という “悪魔のサイクル” に入るのは容易で、出るのはたいそう困難である。

 

 

【骨格の逞しい草食動物のカルシウム摂取】
 スギナが群生した中に立派なニンジンが育った理由を調べたら、有機自然農法の鍵となるカルシウムに。
 スギナはどのようにしてカルシウムを合成するのか。フランスのルイ・ケルブラン氏が発見した原始転換の原理で説明してみましょう。
 大気中にある二酸化炭素を光合成によって炭素と酸素に分離します。その炭素<陽極=原子量12>と、土の中から吸収したケイ素<陰極=原子量28>は、両極にあるため、熱烈な恋をして子供を作ります。その子供がカルシウムです。炭素C(12)+ケイ素Si(28)=カルシウムCa(40)
 自然界のこの仕組みは現代化学では解き明かすことができないものです。 (p.253) 

 スギナって、子供の頃はどこにでもあったけれど、今は、ほとんど見たことがない。化学肥料農業によって、駆逐されてしまったのだろう。

 

 

【近代化学農法で栽培したピーマンが枯れた】
 いろんな病名がつけられ、さまざまな農薬を試したけれど効果なし。根っこを見たら原因がわかった。
 多量の化学肥料を土の中へ入れるために、土の中が高濃度となり、浸透圧が高くなって逆流現象が起き、根が枯れてなくなる。 (p.244)
 人間ならばお金が続く限り欲望に任せて飽食の贅を尽くすのであろうけれど、植物は浸透圧の法則に従って、ダイレクトに枯死という自然死を選択する。

 

 

【表土は石の粉か?】
 表土は石の粉ではなく、植物の化けものなのです。 (p.29)
 アスファルトの間隙に生えている草がある程度大きくなると、その周りには必ず土が集積している。風に運ばれて吹き溜まったのでなければ植物の化けものである。

 

 

【塩分は血圧を上げるか?】
 塩分は血圧を上げるという定説には、本当に根強いものがあります。
 それができたのは、アメリカのダール博士が、日本の都道府県別の食塩摂取量と高血圧の発生率を比較調査してからでした。・・・(中略)・・・。ところが、後に地区別に分けて、もっと詳しく調査したところ、塩分摂取量が多くても高血圧にならない地区が多く存在することがわかり、もう一度、食べ物との因果関係を洗い直してみました。すると犯人は、白米であることがわかりました。博士はもう一度発表しなおしましたが、人々に植え付けらた先入観は色濃く残り、既設を覆すにはいたりませんでした。それ以来、東北の人々は、濃い味噌汁と漬物を食べているから高血圧になるのだという、いわれのないレッテルを貼られてしまったのです。濃い味噌汁と漬物ほど、日本人の体にとって良いものはないのに、です。健康になりたければ、濃い味噌汁と漬物をもっと食べるべきなのです。 (p.100)
 著者のこの見解は、自然塩と玄米食の組み合わせをもって正解としている。
 かつて日本の沿海地域のいたるところにあった塩田地帯で作られていた塩は、どれもミネラルが豊富であったけれど、沿海地域は工業用地に適していたこともあって、専売法とともにNa単一成分塩がミネラル塩を葬ることになった。
 著者は玄米食主義者らしいけれど、これについては異論をとなえる人々が多い。玄米食は胃が強靭な人にはいいのであろうけれど、そうでない人はそのまま出てきてしまうだろう。チャンちゃんは、一度炊いた玄米をミキサーで荒く潰して食べている。玄米食は時々だけど、数日間続けると確かに体調がいい。
  《参照》  『古代倭人からの教え(上)』 山田智之 (ニュートラルサイエンス)
           【お米を研ぐ目的】  

 

 

【千島学説】
 現代医学では、血液は骨髄で造られていることになっています。ですが、実際に健康な成人骨髄を見てみると、脂肪が充満していて造血作用は見られないのです。・・・(中略)・・・。
 小腸で血液が造られているのを発見したのは、千島喜久男博士です。彼は、今から50年ほども前に、実験中に小腸繊毛造血を発見したのです。 (p.125)
 しかし、
 千島論文を認めると、生物学、遺伝学、細胞学、血液学などの定説が、根本から覆ることになり、(千島博士が在職していた)九州大学の内部からはもちろん、他の大学からも強い圧力がかかり、通過が阻止された・・・(p.128)
 十分ありうることである。著者は、以下のように書いている。
 お医者さんに見放されたリュウマチ、アトピー性皮膚炎、ガンなどの人たちに、千島学説にもとづいて、断食をして小腸の宿便を取り、玄米菜食を続けると、みんな2~3ヶ月で治って、元気になっていきます。 (p.129)
 現代医療は、製薬会社の利益のために人間を「カモ」にしている。
   《参照》  "医療"に関する引用一覧
 
 

<了>