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 副題に 「マスコミにもの申す」 とあるように、製造業の実力を正当に評価せず日本経済の過小評価を続けてきたマスコミに対し、様々な過去の事例をあげて異論・反論を唱えている。

 

 

【マザーマシンという人工資源の資本財供給国・日本が衰退する訳などない】
 ものづくりの基本は 「機械を作るための機械」 がしっかりしているかどうかで決まる。そのような機械を 「マザーマシン」 というが、マザーマシンで一級品のものを作っているのは日本とドイツだけだ。 (p.17)
 マスコミがことあるごとに 「追いつかれる」 と叫ぶ中国の製造業であるが、いい製品を作っている工場で稼動しているのは、みなこれらの日本製製造設備である。そして製品の心臓部には、付加価値の高い日本のハイテク部品が使われている。それを賃金の安い労働者が組み立てているのが、中国の製造業の姿なのだ。
 先に述べたように、現代の製造業では、完成品を作るところよりも、心臓部の部品や生産の要となる設備を作ることのほうが儲けが大きい。したがって、中国の製造業が勢いを増したところで、日本の部品メーカー、製造設備メーカーが儲かるだけである。この図式が変化しない限り、日本が中国に追い抜かれる心配はない。私が 「中国恐るるに足らず」 と申し上げている理由が、これでおわかりいただけるだろう。 (p.30)
 台湾も韓国も、中国と同様である。
 全世界の工場の25%は日本メーカーが作っているという数値を、長谷川慶太郎さんの書籍の中で読んだ記憶がある。そうであるならば、アジアの工場の80%程度は日本メーカーが作っているのではないだろうか。まさに、日本の工業力がアジアを豊かにしているのである。

 

 

【世間を惑わし続けてきたマスコミの「前科」 】
1973年 「第一次オイルショック」 で発生した 「トイレットペーパー騒ぎ」 
      オイル不足とトイレットペーパーには、何の相関も無いのに、騒ぎを報道して煽った。 (p.65)
1987年 「東芝機械ココム違反事件」 
      東芝機械と東芝は直接には関係ないにもかかわらず、当時アメリカ
      市場で売れまくっていた東芝製のノートパソコンを不快に思っていた議員が、
      東芝のPCをハンマーで破壊するパフォーマンスを演じ、それに詰め掛けた
      日本人ジャーナリスト72名、アメリカ人ジャーナリスト2名。 (p.76-78)  
      かなり馬鹿げている。
1993年 「平成の米騒動」 
      国際的な流通量の20%を日本が緊急輸入したため、国際米価の高騰を招き、
      日本に輸出したタイ国内では、貧困層に餓死者が出るほどだった。 (p.66)

 

 

【日本の圧倒的な工業力を示す揺るがぬ証拠】
 日本は地球上の土地の0.3%しかない狭い国土に、世界人口の1.8%が住んでいる。そこで日本人はものづくりの才を生かして製造業を営み、世界のGDPの12%を稼ぎ出している。これは製造業の付加価値が高いからこそ出来るもので、他の産業が肩代わりすることは不可能だ。  (p.120)
 金融業やサービス業などのホワイトカラーは、付加価値を生める業種ではない。つまり、これらの業種は生産効率をあげることに寄与しない(できない)。
 日本の世界に占めるGDP比率は、高付加価値の工業力が生み出す高い生産性に引き上げられる形で、対人口比で世界各国の6.7倍にも達しているということである。
 付加価値の高い工業力に引き上げられてきたが故に、日本の物価や給与所得水準が高くなっているのである。
 金融業など、日本経済の実力に何ら本質的な関与などしていないのに、欧米のパワーエリートに支配されているマスコミと日銀は、金融バブルを煽って、製造業が主体となって築いてきた日本の資産を、度派手に散逸させることに一役買っていただけである。

 

 

【製造業 vs 金融業】
 長い間大蔵省の保護下にあり、自由競争の経験が無かった金融業と、世界を相手に日夜汗まみれの競争を続けている製造業では、どちらが本物であるか、考えてみるまでもない。にもかかわらず、マスコミは一向に態度を改めようとはしない。この頑固さに、つける薬はないものだろうか。  (p.142)
 私は、経済ニュースに出てくる金融グループ傘下のポチ公コメンテーターが、何を言うか楽しみに耳を傾けている。著者の唐津さんなら、それらのコメンテーターにどんな薬を付けたがるのだろうか・・・・と思いながら。
 
<了>