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 些細なことを見逃しておくと、大きな損失になるという趣旨のビジネス書。主要なポイントは序盤にすべて書き尽されている。


【「壊れ窓理論」】
 これが壊れ窓理論の核心である。「社会心理学者や警察官に言わせれば、壊れた一枚の窓が修理されずに放置されていたら、残りの窓もじきに壊れる」 なぜだろうか。
 それは「建物の所有者も地域住民も、壊れた窓など眼中にない」という情報が、そこから発信されているからだ。そのような印象を醸しだすといってもいい。この当たりは無法地帯で、みな匙を投げている。すき放題にやろう、どうせだれも気にかけやしない。  (p.10)
 1994年にニューヨーク市長に当選したジュリアーニ市長が、地下鉄の落書きを徹底的に消すことで、凶悪犯罪まで激減させたという事実が、「壊れ窓理論」の正当性を実証している。
 この理論は、当然のことながら、教育にまで用いることができる。 『江戸取流「学力革命」』 の本の中でも言及されていたのは言うまでもない。逆にいうならば、清掃の重要性が認識できていない教員は、ご自身の道徳観が既に綻びており、「壊れ窓」化しているということである。
 トヨタであれ何処の企業であれ、優良企業の工場内・事務所内は、常に清掃が行き届いている。清掃、整理整頓ができない人や組織は、頭の中も人員の配置も実は整理されていないということになる。

 

 

【「壊れ窓」と化している豊島区の図書館】
 かつてレイ・ロックは、訪れたマクドナルドの店舗が水準に達していないと感じると、みずからモップを握り、清掃を始めたという。ルドルフ・ジュリアーニは、ニューヨーク市の地下鉄車両から落書きが消えるまで気を抜かなかった。・・・(中略)・・・何かを命じるだけでは足りない ---- それが実行されたかどうか、自分の目で確認しなければ。
 アリの穴から堤も崩れる。この諺はビジネスの壊れ窓理論にも当てはまる。  (p.42)
 東京都豊島区立巣鴨図書館を数年前から時々利用しているが、先月末、久しぶりにここを利用した。この2階の男子トイレは激しく臭いのである。数年前から臭かったという記憶が蘇り、業を煮やして、「トイレの便器ばかりではなく床もキチンと掃除してください」と図書貸し出し係りの女性にクレームを伝えておいた。1週間後に訪れると、清掃されたらしくやや臭気は収まっていたものの、まだまだ清掃状況は不完全である。
 このような不潔なトイレを放置しておくような民間企業なら、はるか昔に倒産しているだろうが、公共の施設なのでシャアシャアと生き延びている。巣鴨図書館館長などという役職は、殆ど勤務もせず不在のまま高額給料支払いポストとして利用されているだけなのだろう。数年間、異臭を発するトイレをそのまま放置し維持し続けてきた最高責任者とは、一体いかなる存在なのか? 豊島区の職員管理が既に「壊れ窓」化している確実な証拠である。
 豊島区長は、各図書館内の職員控え室を抜き打ちで訪れてみてはどうか。アルバイトか外注の職員が忙しく働いているだけで、半分以上の正規職員は、おそらくカラ出勤でノウノウと給料をもらっているのではないだろうか。

 

 

【ヤンキースの 「壊れ窓」 防止策】
 「ヤンキースを買うのは “モナ・リザ” を買うようなものだ」 とスタインブレナーは言った。
 「 “モナ・リザ” を安物の額にいれてクローゼットにしまっておいたりしない」
 いくつかの決まりごとがヤンキースで働く人々に課せられた。髭を生やすのは禁止、仕事で移動するときはスーツにネクタイ。見た目のことが、ボス直々の命令である(本人はよくタートルネックを着ているが)。スタインブレナーは、イメージの大切さや、商品(この場合はプロ野球のチーム)の持つ印象が、入場券の売り上げやその他の収入に大きく関わると知っている。細かい点まですべてに気を配り、見逃されていることがあればただちにその壊れ窓を修理するのである。  (p.45)
 おそらく、東京読売ジャイアンツはヤンキースに準じている。日本ハムの小笠原は、ジャイアンツに移籍するに際して、髭を剃ることを条件付けられてしまったのではないだろうか。
 髭を剃ってしまってから、小笠原の輝きが薄らいでしまったように思えてしかたがない。そもそも、小笠原の髭は強打者としてのトレードマークだったはずである。ジャイアンツという集団に属する限り、“壊れ窓” とされてしまうのであるなら、小笠原は個人として輝くために、ジャイアンツを出て、再び髭を生やすべきである。

 

 

【VHS vs ベータ】
 1980年代のカセットテープを巡る松下とソニーの主流争いに関して。
 業界の大部分が、ソニー方式の利点だと考えていたこと ------ ベータのカセットのほうが小さいという事実 ------ が、壊れ窓と化したのである。VHSのカセットは幅広で長さもあり、より長いテープを収めることができたため、普通のスピードなら2時間の番組録画ができた。それに対しベータは90分しか録画できなかったのである。 (p.150)
 昔の話だけれど、この勝敗については松下とソニーの営業力の差が勝敗の最大要因だったと言われていたことを記憶している。それにしても、このケースを「壊れ窓理論」に当て嵌めるのは、いささかこじつけに過ぎはしないだろうか。
 
<了>