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 “似たもの夫婦” とか “飼い主に似る” とか言われるけれど、異性選択に及ぼす外見の影響が、豊富な写真例で確認できるので、おもしろい読み物になっている。しかし、運命に関するごく一部を扱っているだけのものであるから、奥深さはとうてい期待できない。
 

【恋愛と顔の関係】
 本書は、「ハーモニー効果」、「エコー効果」、「初期記憶」 が見られた相手との恋愛がうまくいく、あるいは関係が実を結ぶと示唆しているのでは決してない。ただ、3つのタイプを頭の片隅に入れておけば、どんな外見上の特徴がきっかけとなって恋愛が生まれる可能性があるのか、多少なりとも気付くこともあるのではないだろうか。(p.8)

 

 

【ひとめぼれの3つのタイプ】
① ハーモニー効果=配置バランス
  互いの顔の配置バランスが似ている人に惹かれる。
② エコー効果=形状
  上瞼のライン、上唇のライン、まゆげの3箇所の形状が似ている人に惹かれる。
③ 初期記憶=最初の絆
  初めて絆を感じた相手に似た人に惹かれる。 (p.8)
①の事例として、チャールズ皇太子とダイアナ妃、リズ・ハーレーとヒュー・グラントなど、
②の事例として、デビット・ベッカムとビクトリア、エドワード王子とソフィー・ウェセックス、J・F・ケネディとマリリン・モンローなどが挙げられている。
①は全体の類似、②は部分の類似だけれど、配置バランスが極端に違うことはむしろ少ないからだろう、②のカップルの男女の写真を半分ずつにして左右で合成した写真は、まるで一人の人物であるかのように似ているものが多い。
③の事例は、たいていは幼児期に見慣れていた顔なので、男性にとっては母親、女性にとっては父親になるけれど、母親ではなく乳母や養母や年上の姉の場合もありうる。ダイアナと別れたチャールズ皇太子が選んだカミラ。どう見たってダイアナの方が圧倒的にきれいなのに、なぜカミラなのか? カミラはチャールズ皇太子の最愛の乳母だったメイベル・アンダーソンにとてもよく似ているのである。

 

 

【美人は平均値】
 顔の各部分の定点を取り、平均値を求めるために複数の人々の顔を画像合成してゆくと、美男美女になってしまうという。意外というべきか当然というべきか分らないけれど、美人と言うのはバランスにおいて平均的な人ということである。
 このことを踏まえて考えれば、映画やドラマの配役に美人を採用するということは、視聴者のバラバラの好みに対して最も無難な選択と言うことになる。同時にそれは、製作者の側に配役に関する個性的・現実的な主張がないことを示してもいる。平均値と言うのは現実をあるがままに映すものではないのだから。
 美人=平均値、と言うことは、化粧品業界などの美を商う産業は、時代の変化に関わりなく、必ずや求められ存続しているものだということが理解しやすい。
 
<了>