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 読書記録に残すことを躊躇うような小説だった。
 いきなり道路上でクジラに出くわすという妙な場面から始まっているこの小説。
 主題がぜんぜん分からないのである。
 だから、小説内容以外で、興味深い点を書き出しておくだけ。

 

 

【古代ハワイ語】
 ひろ子という日本人の女の子が主人公で、ハワイのハナという土地が、この小説の舞台である。
 マイケルの顔に笑みが浮かんだ。この島では、Hiroko よりも Hiloko のほうがはるかに神聖で古めかしい響きを持っていたから。古代ハワイ語には、Lの音しかなく、Rの音は存在しない。
 ヒロといえば、マウイのとなりにある、大きなハワイ島の地名とおなじ。ハワイ島のヒロから出たカメハメハ大王が、オアフ島を攻めにかかったとき、マウイ島のハナを中継地点にしたのだという。そして、このハナで妃を娶ってもいたのだ。
 だから、ヒロ、ということばは、ハナの人々にとっては特別な意味を持っていた。 (p.30-31)
 
 
【カプー → タブー】
 その大嵐からハナを守ってくれるのは、古くからここにまつられている神だけだ。だから、神々が定めたカプーをやぶってはならない。・・(中略)・・。カプーとは、古いポリネシアのことばで、禁忌事項を意味する。これが英語に取り入れられて、タブーになった。 (p.48)

 

 

【プリンストン高等研究所:世界の変人科学者の一大殿堂】
 1930年代以降は、まったく、このプリンストンが、世界の変人科学者の一大殿堂になったんだ。 (p.113)
 ここに集っていたのは、不完全性定理を証明したゲーテル、相対性理論のアインシュタインの他に、ボーア、パウリ、ディラックなどの科学者である。
 これらの科学者たちが戦争を避けてアメリカのプリンストンにやってくる以前、オーストリアのウイーンに集まっていた頃に語り合っていた内容が、トーマス・マンの 『魔の山』 の中に書かれていたことを覚えている。

 

 

 博覧強記の荒俣さんらしい記述箇所は、この付近だけのようだ。
 オカルト的な異界小説でもなく、男性読者にはやや物足りない感じの小説である。
 この書籍は明らかに女性読者をターゲットに書かれているらしい。
 どうであるにせよ、私には、この小説の主題が分からなかった。
 
 
<了>