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 1998年のIMF管理後の2000年頃の韓国の実状か記述されている。
 おそらく韓国の文化をあまり心得ていない普通の日本人読者が、この本を読めば、“呆れた韓国経済の実態” と思うのではないだろうか。財閥が象徴する韓国経済は、良きにつけ悪しにつけ、韓国の国民性を反映している。
 
 
【現代(ヒョンデ)財閥】
 「鄭周永が率いた現代財閥」はすでに、「歴史」になっている。 (p.53)
 創業者・鄭周永は北朝鮮出身者だったそうである。金泳三大統領が当選した時は、対立候補として選挙に出馬していたが負けてしまし、金泳三政権下では痛めつけられていたようだ。しかし、金大中大統領の南北融和政策で、北朝鮮への観光ルート・金剛山開発に人生の最後を賭けていたらしい。
 上に書き出した文章は、50頁ほど費やして書かれている「現代財閥」に関するまとめの文章であるが、この本の冒頭に書かれている王子の乱(息子達の経営権争い)を読んでみれば、日本人なら最初からオモイッキリ呆れてしまうだろう。

 

 

【三星(サムソン)財閥】
 三星(サムソン)財閥の場合は、創業者の息子達が経営権を争う醜さを演じてはいない。息子達は早稲田大学を卒業するなど、日本との人脈を生かして、日本の製造技術を導入してハイテク部門で莫大な利益を生み出す賢明さを持っている。
 サムソンは既に十数年も、日本研究のためだけに社員を日本に派遣し、日本の長所を学ぼうとしているようだ。私がこのブロクに掲載している 「日本文化講座」 や 「日韓政治経済」 や 「日本経済産業」 や 「韓国人向け」 は、そんなサムソンの社員に出会ったことが契機となり、10年ほど前から書き溜めておいたものである。

 

 

【大宇(デウ)財閥】
 GMと覚書を結んだ金泰球大宇自動車社長は、実はIMF危機が起こらなければボーランド自動車社長に就任する予定だった。
 米フォード社への売却が失敗に終わった2000年9月は、(国内)シェアが最低となった。フォード社が懸念したのは、大宇自動車における経営陣と組合の関係だった。労組との協約があるため人員整理が思いどおりにいかなければ経営がしにくいというわけだ。 (p.66)
 労働組合の存在は、韓国経済のマイナス要因であることは明確である。日本から見れば韓国の人件費は安い。しかし労組の主張が強いので、総じて言えば人件費安のメリットは殆どないとこは、日本企業にとっては経験上周知のことである。

 

 

【財閥成長の光と影】
 96年に韓国はOECD加盟国の仲間入りを果した。しかしその1年後に深刻な通貨危機に陥り、IMFに緊急融資を要請することになるとは誰も予想しなかったであろう。(p.108)
 韓国人は予想していなかったかもしれないが、サムソン財閥のコンサルタントをしていた日本人の大前研一さんは、韓国の経済危機を2年ほど前から予告して本に書いていたし、韓国内でもそのことを講演で述べていた。
 韓国の財閥は、ほとんど輸出型産業である。内需で発展したのはホテルやテーマパークを経営するロッテぐらいしかない。(p.108)
 輸出型産業の製造ラインを韓国に輸出していたのは日本であり、部品を供給していたのも日本である。つまり、韓国の財閥は、組み立てて売っていただけである。
 政府は特定産業やそれを担う財閥に意図的に資金配分を行う金融政策を実施してきた。十分な担保がなくても容易に融資を受けることができた。また二桁のインフレが進行する中で、1桁台の金利で融資を受けられたので、極端にいえば何もしなくても金利は帳消しになり、利益が得られたのだ。 (p.108)
 つまり韓国の財閥は、政府の融資を元手にして、日本の技術で工場設備を整え、時代のインフレという追い風に乗っていただけで、優雅に利益を得ていたのである。ここには、最初から最後まで、苦難を乗り越え、額に汗して、必死に働くという過程は、全くない。
 つまり、韓国の財閥にとっては、政府と密接な関係を保つことが第一に重要であり、売上を増やすこと=設備投資を増やすことであり、経営努力とか経営の合理化は関係なかったのである。田んぼの面積が収穫量に比例するというのと同じで、経営に知恵を働かせる必要はなかった。単に規模の問題だった。そのために、行き着いた先は、韓国経済を象徴する “負債比率の過大” である。
 どう考えても、韓国企業の負債比率は他国に比べて高い。それゆえ、企業の負債構造により韓国企業の景気変動に対応する能力が弱く、それがIMF危機を招いた一つの原因だった。(p.147)
 それでも経営に知恵を絞って本質的な改善を目指さないのが韓国人気質である。
 負債比率200%を切るために、本来ならば経営改善をしなければならないのに、手っ取り早く株式発行に頼ったのである。アングラマネーを吸い上げ、株好きな国民に助けられたわけだが、これは本末転倒である。 (p.148)

 

 

【「両班(ヤンパン)」思想の根強い韓国】
 韓国には 「両班」 思想がある。最も尊敬される職業・身分は、儒教を学び天下国家を論じる両班で、一生懸命働くことは、あまり尊いとは思われていないふしがある。だから一生懸命に足でこがなければならない自転車は、みられると恥ずかしいので、あまり流行らない。また、韓国には 「しにせ」 の各店が少ないのは、もうかると店を閉じ、資金運用で暮らそうとするからである。このように労働自体の評価が低いのである。(p.166)
 両班の対極は賤民である。つまり韓国人は皆、「自分は賤民ではない」 と思いたいのである。自転車のみならず、バイクも車に比べれば惨めな賤民の印象が強いので、韓国では殆ど走っていない。
 韓国の歴史的な文化を背景に記述されている箇所は、この本の中ではこの記述が唯一である。韓国の文化を具体的にもっと知りたい人は、呉善花さんの著作群を読むのが最適である。

 

 

 韓国の文化とビジネスの現場を具体的に知れば、韓国経済の脆弱さはよく分かる。韓国の国民性は、階級社会構造に基づく “恨(ハン)の文化” に根付いているから、自己反省より圧倒的に他罰が得意である。故に本質的によくなる可能性はない。
 ただ、IMF以降、アメリカに利用されている企業が短期的に繁栄することはあるであろうが、あくまでも花火のような繁栄である。 
 
<了>