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 作者の名前をみて、語呂の良い3連単語が思い浮かぶ。“バジリコ、ブリッコ、バリッコ”
 さて、
 7年前に見た映画の原典を見つけたので読んでみた。映画の邦題は、この小説のタイトルと同じ。
 イタリア人作家の小説。


【タイトル】
 タイトルは 『ノヴェチェント、ある告白』、一人芝居の形をとった作品、つまり本書である。「ノヴェチェント」というのは、900という意味で、1900年に生まれたことから付けられた主人公の名前でもある。ちなみに、映画では、主人公は「ナインティーン・ハンドレッド」と呼ばれている。 (p.146)
 映画の原題タイトルも 『1900』 だから、外国人と話すときは、 『海の上のピアニスト』 を英訳しても通じない可能性が高い。

 

 

【小説で発見した時代】
 映画では綺麗な衣装と美しい船内装飾が殆どだったので、1920年頃の時代を強く感じたことはなかったけれど、小説の中にはこんな記述があった。
 船に乗るときは、かろうじて尻を覆う程度のボロ切れしか身にまとってないんです。ところが、いざ船を降りる段になると、みんな立派な服を着ている。かれらが下船したあとの三等船室には、シーツはおろか、カーテン一枚残っちゃいない。彼らに対して何が言えます・・・・・・  (p.26)

 

 

【映画で流れた涙】
 7年前に、この映画を2回見た。最初は二人で、二度目は一人で。最初の時は涙なしで見終わったのだけれど、何かしら感じ取れないものがありそうな気がしていたので、もう一度、一人で見に行った。そして、涙が止まらなかった。その涙の理由を、この原書で確認してみようと思ったけれど・・・・。
 原書を読んでも涙は流れなかったけれど、それらしい箇所の記述はこうなっている。
 ぼくはこの船の上で生まれた。この船には、世界がやってきては、去って行った。でも、1回に2千人ずつだ。僕にだって夢はあったさ。でも、そいつは舳先と艫のあいだに収まる夢だった。無限ではない鍵盤の上で自分の音楽を弾く、それが僕の幸せだった。
 そうやって、自己流に自分の音楽を生み出してきた。陸地というのは、僕には大きすぎる船。長すぎる旅。美しすぎる女。強すぎる香水。ぼくには弾くことのできない音楽。許してくれ。ぼくは船を降りない。帰らせてくれぼくのいるべき場所に。 (p.129-130)
 つまり、自分の世界から出られない悲しみだったのだろうか。映画の中で語られていたセリフまでは覚えていないけれど、7年前はどうしてそれほどグッときたのだろう。今の自分には、その違いがよく分からない。自分のことなのに、自分のことが分からなくなっている・・・・・・・・。
 
<了>