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 著者は、カナダ・オタワ大学の経済学教授だという。
 この本には、『アメリカン・ディストピア』 に書かれていた内容を裏付ける具体的な事実が記述されている。大学で国際関係を専攻する学生ならば必ずや読んでおかなければいけない本であろう。


【国際政治の裏側はこんなもの】
 かなり以前、ノース中佐のイラン・コントラ事件が日本でも報じられたことがあったので良く覚えている。敵対する国に武器を売っていたという理由でノース中佐という末端の人物が裁かれたのであるけれど、これに関わっていた中枢の政府高官は決して裁かれなかったのはいうまでもない。
 2001・9・11に関しても・・・・・。昔も今もアメリカとはそういう国である。
   《参照》  『戦争を企画する者たち』


【シルクロード戦略法】
 中央アジアにある、カザフスタン、トルクメニスタンなど石油や天然ガスを産出する地域を確実に支配することは、北のモスクワからだけでなく、東の中国、南のイランからの政治的・経済的な圧力に弱いこの地域の安全を促進することであり、中国、イラン、トルコ、イラクとの経済・政治・防衛的な絆を発展させることを阻止する意図もある。(p.130 , p.131)

 東アジアで完璧すぎるほど完璧に成功しているアメリカ戦略の基本である「分断と統治」。これを、中央アジアでも達成しようとするのがシルクロード戦略である。昨日や今日に始まったことではない。中央アジアにおいても、種を蒔き始めて既に30年以上の月日が流れている。

【アフガニスタンの意味】
 CIAの秘密裏の活動は、強力な金融・銀行機関の力を借りて、麻薬から生じた金を間違いなく適正化する役割を果たしているのだ。これに関しては、アフガニスタンが戦略上必要であったのは、アフガンが世界最大のヘロイン生産国だったからだ。タリバン政権は、ブッシュ政権の指令によって崩壊してしまったが、それは(国連の指導によって)タリバン政権がアヘンの生産を90%以上も抑えたからである。アフガニスタン空爆のおかげで麻薬取引を数十億ドル回復できたが、これはCIAの支援があったからだ。合衆国の傀儡政権を設置した直後には、ハミッド・カイザル大統領のもとで、アヘン生産はうなぎのぼりに上昇し、歴史的なレベルを取り戻したのであった。 (p.219)

 資金源としてのアヘンだけが目的でないことはいうまでもない。中央アジアで産出する石油を搬出するパイプラインの経路としてアフガニスタンが地政学上重要なのである。


【かつてのアイゼンハワー大統領の警告はもはや・・・】
 1960年代、ベトナム戦争にのめりこんで戦争経済に入っていった頃のアメリカが、40年の時を経て再び繰り返されている。落合信彦さんの本に書かれていたところによると、アイゼンハワー大統領はアメリカ国民に「ミリタリーコンプレックス(軍産複合体)の暴走に気をつけよ」と退任時に告げていたという。
 しかし、現在のアメリカにそのような良心的な発言をいう大統領など決して現れないだろう。自らが育てたテロリスト集団を使って火をつけ、火を消すといいながら軍需産業に莫大な利益をもたらしつつ、テロ対策を口実に世界中を盗聴監視する情報網を備えている全体主義国家、それが現在のアメリカである。


【すでにラテンアメリカでは・・・】
 「ドル化」 の経済的・社会的影響は深刻である。(p.227) 

 と、アルゼンチンの実情が短く紹介されている。既にIMF体制の軍門に下っている韓国は、実質的にアメリカの経済的植民地である。韓国が、第二のアルゼンチンにならないで済んでいるのは、韓国企業が、中国から利益を吸い上げるためのパイプ役を担っているからだろう。アメリカのグローバリゼーション戦略がこのまま続く中で、北朝鮮の体制が崩壊し、中国が経済崩壊すれば、韓国もアルゼンチン化するのは目に見えている。


【地球は警告されている】
 地球上に生息する大国の政治家や産業資本家達に、余りにも人類愛がないから、地球環境異変という天意(あい)によって、地球全体が裁かれようとしている。
 地球の環境異変はホッケースティック曲線を描いて急速に進む。スティックの踵を過ぎたらもう終わりである。科学者がスーパーコンピューターを使って予測しているような漸増曲線などという悠長なものではない。

 

<了>