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 ヨコ帯にあるように、著者は、山崎豊子さんの小説の主人公のモデルとなった方だそうである。著者は日本航空の職員で労働組合運動を指揮していたがために、“懲罰人事”として、パキスタン、イラン、ケニアへと10年間ほど盥回しにされたのだという。日本航空出身者といえば、ビジネスマン向けの著書を書いている深田祐介さんもそうで、かなり人間関係の難しい会社のようだ。
 ところで、この本の中に、タイトルに合致した記述は終盤のみで、殆どは1930年生まれの著者の戦争時代の体験内容である。


【大都市爆撃を指示した人物に勲一等瑞宝章!!!】
 国際法違反の最たるものである非戦闘員を標的にした広島・長崎の原爆や、大都市の絨毯爆撃を指令したカーティス・ルメイを戦後の日本政府がどう遇したか、ご存知ですか、または想像できますか。日本政府は陸軍大将になっていた彼に勲一等瑞宝章を授与したのです(どよめき)。理由は航空自衛隊の育成に貢献したということです。(p.52)

 (どよめき)と書いてあるのは、著者の講演時の記録だからである。それにしても、日本政府と高官のやることはデタラメ過ぎて、ただただ絶句するのみである。


【無責任社会の原因は天皇?】
 今の世の中を見まわすと、政治家、高級官僚、警察を含めて、銀行経営者、みんな無責任になっていますね。わたしは何もあの時、昭和天皇は腹を切るべきだったっていうようなことを言っているのではないのです。退位して仏門に入られる方法もあったのではないでしょうか。 (p.57)

 著者は、天皇が戦争責任を取らなかったから、今の日本人がみんな無責任になってしまったといっているけれど、これは事実誤認である。著者同様、戦争を体験した世代の方々の多くは、天皇の戦争責任を問う人々が多いけれど、私たちの戦後世代は、戦前、戦中、戦後の天皇の置かれていた状況は、天皇の戦争責任を云々できる状況ではなかったと理解している。
 また、戦後、京都の仁和寺にて天皇を仏門にいれてお守りするという手段も計画されていたことを、仁和寺の僧侶から直接聞いたこともある。
 それよりなにより、昭和天皇自身 「国民を守るために、自ら進んで一身に戦争責任を取ろうとしていた」 ことを知っていなければならないだろう。
 軍国主義時代の国家神道の虚構にだまされていた戦争世代の年長者の方々であるが故に、天皇を譴責したい気持ちは分かるけれど、それは天皇に関わる事実としても筋としても違っていることを知っていただきたい。


【アンセボリ・ナショナル・パーク】
 キリマンジャロの麓にあるケニアの国立公園。ここはマサイ族の居住地域であったが、貨幣経済の浸透によってマサイ族出身の政治家が力をふるい、公園保護区は当初の予定の8分の1になってしまったそうである。家畜の放牧でマサイ族自らが環境を破壊しているという。
 キリマンジャロの山頂の万年雪は、地球温暖化で融けてなくなっていることを最近のテレビで放映していた。麓からも山頂からもキリマンジャロの異変は挟み撃ちである。
 来年あたりから地球のカウントダウンが始まってしまいそうな気がする。大丈夫なのか人類は? 
 

<了>