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 本のタイトルと出版社名から、古典による教養書と思ったら、半分以上はカタカナだらけで「欧米か!」といいたくなるような、煩わしい企業の現実対応の実例が書かれていた。それでもコンパクトにまとめられた興味深い人物編が3分の1程度は記述されている。


【ドラッカーの絶賛】
 P・ドラッカーはその著書『マネジメント』で渋沢を次のように評している。
 率直にいって私は、経営の「社会的責任」について論じた歴史人物の中で、かの偉大な明治を築いた偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを知らない。彼は世界の誰よりも早く、経営の本質は「責任」にほかならないということを見抜いていたのである。 (p.76)

 渋沢と同時代に、関西で活躍していた五代友厚という人物のことを、ドラッカーさんは知らないのかもしれない。日の元の神道家の中には、「渋沢栄一よりも五代友厚のほうがその功績は高い」と評価する人もいる。


【ベネッセ・コーポレーション】
 「福武書店」として創立され、「進研ゼミ」で知られる通信教育講座などをはじめて、今日の「ベネッセ」に至っている。社名はラテン語の、bene(良い)esse(生きる)が元になっている。「赤ちゃんからお年寄りまで、一人ひとりの『よく生きる』を生涯にわたって支援する」を企業使命としている。 (p.111)

 名前のとおりになることがある。大相撲の世界で、千代の富士と北勝海、2人の横綱を擁していた九重部屋は、2人で9連覇をはたした。二子山部屋は、貴乃花と若乃花、2人の兄弟横綱を誕生させた。
 ベネッセも名前を変えたことで、よりよい会社へと変貌をとげるであろうことは容易に推測できる。


【余談:日本のルーツ】
 余談ではあるが、若・貴のことを書いたので思い出してしまった。長野オリンピックの開会式では力士が国別のプラカードを持つ役割を担っていた。貴乃花と若乃花、二人の兄弟力士は、抽選の結果、日本とイスラエルを分担することになっていた。しかし、貴乃花は病気で出られず若乃花が2国のプラカードを持って2回入場行進を行った。
 相撲は神事である。神事を司る力士が関わるオリンピック行事で、偶然が重なったこの事態に、必然という深い深い意味が感じられる。


【電機業界の性格比喩】
 かつて電機業界では俗に、三菱電機は殿様、東芝は武士、日立製作所は野武士、松下電器は商人と評され、今日なおそのような譬えの一端がうかがわれるのかもしれない。 (p.126)

 殿様とは天下りが多いこと、武士は天下りや政治家に忠実、野武士はやや不忠実なところがあり、商人は政治家とは無縁の商人階級の道を歩んでいることを譬えているのであろう。企業の立地が首都に近いほど政治家の影響力が強く及んでいる。


【 コンプライアンス と CSR 】
 企業の法的責任(compliance)と企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)
 この2つの用語が頻繁に登場する本である。単語の意味が分かってないことには始まらない。 

 

<了>