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 三菱商事の社長さんの書いた新聞連載記事をもとに作られた本。三菱といえば、今年のJ1を制覇した浦和レッドダイヤモンズの母体。著者も、若かりし頃、フォワードの選手だったという。


【諸橋さんという名前】
 三菱といえば、岩崎弥太郎とう名前しか思いつかない。また、諸橋といえば変わった名字なので覚えているが、『大漢和辞典』 の編纂者である、諸橋轍次という名前を思い出す。この方が、著者の父であり、中国留学には岩崎家の援助を受けていたのだという。親子2代に渡る縁ということである。


【三菱と海外戦略】
 米USXとは、大手USスチールが多角経営になり、変更された社名であるが、三菱は、この化学部門のアリステック・ケミカルを日本バブル崩壊の時期に前後して、M&A(合併・買収)していた。 (p.104)

 1980年代、北米地域の外国産自動車売り上げ1は、トヨタ、ニッサン、ホンダでもなく、ヒョンデだったそうであるが、ヒョンデのエンジンを設計していたのは三菱である。現在も、三菱とヒョンデの関係は続いているらしい。長谷川慶太郎さんは、どんな油でも故障しない三菱のエンジンは世界最高性能を持っていると書いていた。今年就航した豪華客船、飛鳥も、三菱重工の技術移転を受けたであろうヒョンデ重工が製造している。


【中国関連】
 1984年に協定書に調印し、1993年からは、国務院発展研究中心という中国最高のシンクタンクが加わったそうである。著者は、父親の 「中国人は本当の大人だ。いろいろなことがあっても、結局はそのキャパシティーの中に飲み込んでしまう」 という言葉を肯定的に捉えて継続的な関係を保持しているようであるが、大丈夫なのであろうか。中国・韓国、いずれもれっきとした反日国家であり、将来にわたって、これを決して止めはしないであろうに・・・。


【菜根譚】
 著者の父親が岩崎男爵の書物を読んだときの感想が書かれている文章が収録されている。
 「老荘と関連して菜根譚を読んだこともあった。この書は、禅味タップリの著述であるが、独り仏教のみと謂わず儒道二教の長所をも巧みに取り入れ、之に加ふるに著者の一流の奇警の観察を持っているから面白い。全巻通読の後に静かに評せられた一語は、『何か浅いような気がする。調子も少し卑しくはないでせうか』 と云うのであった。此れは正に菜根譚の著者に下した頂門の一針であろう。」 (p.156)
 中国が文化大革命の折、識者の判断によって貴重な文献は台湾や日本に流出し、大陸内にはまともな文献はなくなっている。繁体字から簡体字に変わってしまったこともあり、中国の文化は既に連続性を絶たれている。現在の中国人研究者の中国古典研究に関する学識の深さは、日本の先人達が研究し尽くした咀嚼内容に及ぶべくもない。
 中国に対する買いかぶりは、あってはならない。善意の日本企業は、言葉たくみに近づく中国企業に技術を奪われるだけである。そうでなくても、日本に来て、敷設されたケーブルを切断し屋根をはがしてまで銅を奪う、道徳不問の窃盗集団、それが中国人である。中国という国家ならびに人民に対して、ゆめゆめ買い被りがあってはならない。   

 

<了>