イメージ 1

 ベールの向こうにある伊勢神宮を巡る、謎解き本の一つです。
 このような謎解き本には、スピリッチュアリストの系譜にある方が書くものと、文献渉猟学者タイプの方が書くものがあるようです。この書籍は後者に属します。
 私のような一般読者にとっては、後者の書籍はくだくだしい文献引用ばかり長くって、そのくせ結論に至る過程がいまいち明確ではないような本があり、ちょっといただけない印象があります。


【良質な文献渉猟タイプ本】
 しかし、この本は、後者でありながら、一般読者を飽きさせないコンパクトで密度の高い本になっています。
 わずか150頁ほどの本ですから、通常の本なら3時間もあれば十分読みきれる量なのですが、私はこの本を読み終えるのに、おそらく5時間近くもかかってしまいました。書かれている内容が、自分の知っている世界と重なったり、接近した場合に、私の考えが本から離れてビンビン飛び回ってしまったからです。


【ギリシャ神話】
 日本の神話とギリシャ神話の類似性は昔から多くの人々によって指摘されています。この本の中でも、伊勢を巡る神々に対応すると想定されるギリシャ神話の神々が、著者の考察に沿って読みやすく記述されています。その中でも、穀物神・ペルセポネをキーとして重要な考察がなされています。


【錬金術】
 はからずも、昨日の読書記録で悪乗り的に書いてしまったヨーロッパ中世。魔法から科学へと向かう過渡期世界の錬金術。農耕術と錬金術を結ぶヘルメス学のポイントが書かれています。この本の中でも重要な部分です。
 「金属物質が腐敗=死の関門を通って始めて完成の道に入るというこの思想を錬金術⇔農耕術の平行関係と重ね合わせて見るとき、ただちに想起されるのは、錬金術による物質の受難が、穀物神の受難と死と復活に密接に結びついたギリシャ=オリエント的密儀に合致する」 (p.77)


イメージ 2

【『人間この未知なるもの』】
 オカルティズムという領域をどう感じるかは人それぞれでしょうが、私は学生の頃、渡部昇一さんが訳されたアレキシス・カレルの 『人間この未知なるもの』 をわざわざ書店に注文して読んでいました。私の中ではシュタイナーなどと並んで、このような霊学的な系譜に連なる本というのは、意味内容を理解するための本というよりは、魂に招かれて私の中を通っていったとでも表現するしかないような種類の本だったのです。
 こういった錬金術的な思想を 「非科学的であるから相手にできないほどに馬鹿馬鹿しい」 という人々は、悲しい人々です。時空を越えて全人類を愛護するという精神に至ったことのない人々なのでしょうから。


【ケルト】
 この書籍の中では、「ここで話が横道にそれる」 (p.103) としてケルトのことが少しだけ記述されています。浦島太郎伝説に類似したものは世界各地にあるが、ケルトのそれが最も近似している。そして、ケルトと日本は大陸の耳である。などです。
 私は、地球自体を神社の神域と考えれば、ケルトが鳥居で日本が神社の本殿であると思っています。ハリーポッターやエンヤの曲が世界中でヒットしているのは、古代人類が持っていた何物かを彷彿とさせるからでしょう。特に日本人が感受しているものは多いように思うのです。 
 闇雲なのですが、ワールドカップ・サッカーで日本が世界チャンピオンになる時、準優勝は日本を称えるためにケルト・アイルランドであるはず、と私の中で手前勝手に決めています。


▲ 誤植 ▲
 天の安河の誓約に関する記述の中で、アマテラスの持ち物の中から生まれたのは男神三柱、スサノオの持ち物から生まれたのは女神三柱、と記述されています(p.48)が、前者の男神は、正しくは五柱です。おそらく誤植なのでしょう。

 

<了>