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 言わずと知れた新宿・歌舞伎町、夜の街。この街を知悉する著者の肩書きは、犯罪学者・元警視庁刑事である。セクシーなイラストと短文で構成されたこの書籍は、誰であれ一気に読み終えてしまうであろう種類の書籍である。著者の表現力によるところが大きい。


【歌舞伎町は人間の縮図】
 読み始めてから、チャンちゃんは、数字を読みながらフムフム、そしてニヤニヤ、失笑、爆笑、時にドキッっとし、やがて眉根を寄せ、しかも深く頷き、最後は考えるロダンの彫像のようになっていた。確かに歌舞伎町は人間の縮図である。 
 人間の縮図ではあっても、全ての人間の縮図ではない。チャンちゃんは毎日でも歌舞伎町に行けるほど近くに住んでいるが、生まれてこの方、行ったことはない。行きたいと思ったことがないのだ。
 社員旅行でプーケットに行き、同僚の殆どが女性を買っている時に、チャンちゃんはオレンジを買ってベンチに座り海を眺めていた。そんなチャンちゃんを、現地人のガイドはこの世にありえない存在を見るような目つきで見ていた。その目を見てチャンちゃんもビックリ。
 学生の頃、密教的世界を屯していて先達のオバちゃんに「あなたは、そういう処は縁がないわよね」と言われたことがある。霊的な背景で行動領域が判断できるらしい。


【歌舞伎町を訪れた人】
 この書籍の中に、歌舞伎町のゴールデン街にお世話になった作家の名前が数多く挙げられている(p.39)。 吉行淳之介、渡部淳一、村上龍、不思議はない、むしろ順当であろう。しかし遠藤周作や中上健次の名前があって、エッ!と思う。いずれにせよ、彼らは肉体を感覚の器として何ものかを捉えようとしていたのかもしてない。


【精・気・神】
 しかし、昇華という作用も確かにあるのだ。精・気・神は一連のもの。精力の充填は気力を充実させ神力となる。推進力あるいは天かける天使の羽を得んがために、精・気・神を一点に集中している人々は少なからずいる。
 昇華の逆を行く3S政策、Sports , Screen , Sex。 若者の興味をこの3つに向かわせ、若者のエネルギーを消耗させ、国力を根本的に衰退させるというまことに小賢しい政策である。


【陥穽としての歌舞伎町】
 チャンちゃんに言わせるなら、“歌舞伎町は、正しい意味でのエロスの街などではなく、むしろタナトスの街” である。目を背けたくなるようなマイナスのエネルギーが渦を巻いているように思われる。欲望や興味という以前に、気持ちの良い場所ではない。

 

<了>