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【いかに「思い込み」をまぬがれるかがポイント】
 脳は元々思い込みの強い性質があるから、それをいかに崩せるかが、「頭がいい」ことのひとつのヒントかと思います。(p.102)



○多元思考か直覚的飛躍か〇
 この部分を読んでいて思い出したことがある。大学1年の時、夜な夜な同じ下宿の誰かの部屋に集まっていろんな話をしていた。理学部数学課博士課程の先輩の部屋に集まることが多かった。この先輩の部屋には本やら雑誌やらマンガやらがワンサカ積み上げられていて、壁が見えない程になっていた。この先輩から、数学のことだけではなくサイエンス全般のことをいろいろ聞かせてもらい耳学問をしていたのである。私は、純粋数学をやっている人々って、典型的ないわゆる専門バカといわれる種類の人々だろうと思っていたのであるが、全く違っていた。
 最近、『国家の品格』 や 『祖国とは国語』 などで有名な藤原正彦さんも数学者。藤原さんは海外に在住なので、日本という国家や国語について思いを強くすることはあったのであろうが、そもそも数学者は、いかに思い込みを崩すかに奮闘する過程で、読書家たらざるを得なかったようである。
 これが進めば、分別智を離れるべく禅の世界にすすむのではないか?
 NASAが向こう40年間解読できないと言っていた暗号を解いてしまった日本人がいた。松井さんと言ったっけ(確かな記憶ではない)。この人は 「禅寺の庭を散歩するのが好きだ」 と言っていたのである。数学の研究者は、発想の自在性をこの上なく大切にしている。畢竟するに禅と同じ処を目指しているようだ。


○こんなことを考えていた。〇
 思うに私が小説以外の本を読み始めてある程度の年数が経過したとき、「いかに事物は多種多様な視点で語りうることか」 とため息をついていたことがあった。 (子どもの教育に専心しておられる、美智子皇后様が、『橋をかける 子供時代の思い出』(すえもりブック) の中で、「現実の複雑さに耐えなければなりません」 という意味のことを書いておられたが、私も当時、全く同じように感じていたのである) そして、複雑さに耐える体力とは、即ち 「新たな発想・考え方を受け入れ続ける飽くなき作業」 であるように思う。
 終局的な宇宙の真実はシンプルであるかもしれず、直感的に感得すべきものなのかもしれない。しかし、元々不完全な人間の意識が介入して出来上がっている現実世界はコッテコテに捏ねくり回されて複雑怪奇になってしまっているのだから仕方が無い。


○ワンパターンな石頭〇
 一方、現実の世界で、あまりにも長い年月を、同じ思考パターンで過ごしている人々がいる。特定の宗教に属して何年でも同じ発想でいる人にであうと、私は本当にウンザリする。
 教祖という人物が宗教以外なにも芸のない人であるならば、その宗教団体の会員の頭は、ほぼ間違いなくワンパターンな思い込みの石頭である。ましてや、教義・教学の刷り込みが強烈であるのならば言わずもがなである。この手の人々と話をしていても退屈極まりない。気付いて欲しくとも、いかんせん埒が明かないのである。
 しかし、例え教祖が多芸多才であり、身をもって自在性を示していたとしても、その宗教団体の会員がワンパターンな石頭ではないという保証はない。あくまでも個の問題である。


○台湾では「石頭」をこう表現する〇
 因みに、台湾では石頭のことを 「頭コンクリ」 と表現する。このようなユニークな日本語が台湾には今でも残っているのである。 『武士道解題』 を書いてくれた古き良き日本人を知る (日本人であった) 李登輝・台湾前総統の好きな言葉だそうである(『日本人が台湾に残した武士道精神』 p.198 黄文雄 徳間書店)。 李登輝さんに、「頭コンクリの日本人」 と言われたら、それこそ万死に値する。気をつけよう日本人。


【多様性こそ力である。  多様性 VS 一元性  韓国に附ける薬は? 】
 「多様性こそ力である」というのは、思い込みの閉塞性を知っている普通の人間なら、だれでも当たり前に到達しうる概念である。そもそも自然に存在するあらゆる事物がそうなのであるから、それ以外に到達しうる概念などありえようもない。純血種より雑種が強いのが当たり前。故に、車もハイブリッドへと遷移して行くのは必然なのであろう。
 多様性を強固に排除し、国民が常に一致して同じ方向に向かうのは、独裁制か共産主義。歴史上もっとも悲惨な結末を惹起してきた政治体制であり、将来も全く同様であろう愚かな最低レベルの政治体制である。
 民主主義を標榜しながら一元的国定教科書で 「反日」 を教え込む韓国は、日本に韓国同様ご丁寧にも 「一元的内容の教科書にしろ」 と厚かましくも内政干渉する。 「多様性こそ力である」 ということにすら気付けていない。国家挙げての一元的見解に対立する見解は即ち 「妄言」 と断定し思考停止する。故にその知性は、政治家そして国民いずれも極めて貧弱である。
 日本は、共産主義研究者で天皇制を否定する学者に、天皇自ら勲一等の文化勲章を叙勲するような、瞠目すべき多様性を許容している、懐の深―い深―い国家である。韓国に附ける薬は無い。
 


【「人間が作る世界は脳が展開されたものである」】
 脳と世界をこのような相関で語りうる故に、この本のあらゆる部分を基に、果てしなく記述が続いてしまいそうである。脳に係るときりがない。養老さんの 『唯脳論』 だったか 『バカの壁』 だったかにも記述されていたことであるが、この表現は脳科学者が最初に語った表現であろうか? 学生の頃、アーサー・ケストラーの 『ホロン革命』 の中で読んだことがあるように記憶している。
 そもそも後期大乗仏教として分類される 「密教」 に、脳の詳細は、人間改造のサイエンスとして、脳科学・生理学・神経学・心理学などの視点からほぼ全てが語り尽されていた。右脳革命も、七田式教育も、この領域を出るものではないように思える。


【脳を知りつくしている密教の智恵は万全か】
 現在の地球は、26000年サイクルの春分点歳差によるものと、それよりも大きな特異なサイクルが重複する類稀なるタイミングに遭遇している。フォトンベルトを通過する時、人類に生理的に働きかけるものがあるのかもしれない。 「密教」はそれを遥か昔から予言しているが、どうすべきかは語っていない。
 「愛」の超宗教である「神道」は、「智恵」の宗教である「密教」を包摂している。 

 

<了>