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 学生時代に『サラダ記念日』を読んだ時、男女関係における女性の側の心理描写のインパクトの強さに大層ビビッタことを思い出しつつ、久しぶりに俵さんのこの本を買って読んでみた。この本には男女関係(恋)以外の歌も多く収められていた。

 歌人の醒めた目で学生達を歌っている著者の教員時代の歌がいくつか載っている。夢とロマンを表現するのに短歌は相応しくとも、ニヒルな心情の描写に短歌は相応しくないように思う。

 ○ しろたえの夢をつむいで綿あめをコットンキャンディーと呼ぶ十八歳 
 ● 十六でもう人生を投げているとにかくそんな目をして見せる

 神代の時代から伝承されてきたとされる日本の伝統的な文化芸術である短歌は、「そもそも神の言葉を取次ぐもの」としたのが始まりといわれている。「夢とロマンの中に神心はあれど、ニヒリズムではもともこもない」というところか。


 四万十川を題材にした歌がこの歌集のタイトルになっていた。

 ☆ 四万十に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら 

 地球環境の叫ばれる昨今、テレビで四万十川の情景を何度か目にしている。夏休みの今7月末、都会の子供達は田舎を目指し、田舎の子供達はディズニーランドなどを目指して首都圏に集まってくる。最近の都内の電車内には小学生連れの家族が多い。
 都会には夢とロマンを形にした神があり、田舎には自然という神がある。

 

<了>