「奇跡の決勝トーナメント進出」を目指して…。可能性がある限り諦めない! | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

「奇跡の決勝トーナメント進出」を目指して…。可能性がある限り諦めない!




 ホンジュラスが、崖っぷちに追い込まれました。



 ブラジルW杯2014、初戦。強豪フランスと対戦したホンジュラスは、前半終了間際まで魂の戦いを見せ「0-0」の同点で試合は進んでいましたが、「このまま同点で前半終了か」と思われた前半44分…チームの攻守の要MFウィルソン・パラシオス が自陣ぺナルティーエリア内で痛恨のファールでPKを与え、かつ2枚目のイエローカードで退場…。PKをベンゼマに決められ、これで全てのゲームプランが完全崩壊してしまったホンジュラスは、大事な初戦を「0-3」で落としてしまいます。

 続くエクアドルとの一戦は、決勝トーナメント進出を目指して「絶対に負けられない戦い」となりました。

 ところが…。エースのカルロ・コストリーがホンジュラスにとってW杯で実に32年ぶりとなる記念すべきゴールを決め先制するも、その直後に心配されていたホンジュラスの弱点の1つ…右SBベッケレスがボールウォッチャーになってマークを外してしまい、シュートのこぼれをエクアドルに押し込まれ同点に追い付かれると、後半にはFKからマークを徹底できずヘディングで決勝ゴールを奪われ、まさかの「1-2」痛恨の逆転負け…。


 悪夢の2連敗。普通なら2敗した時点で「グループリーグ敗退」が決まります。


 しかし…。「ありえない!がる!」のがホンジュラス…。何と2敗したにも関わらず、最終節のスイス戦に勝利すれば、エクアドルの結果次第で決勝トーナメントに進める」可能性が奇跡的に残ったのです!!


【2試合を終えてのグループE順位表】
 
1位:フランス     勝ち点6  得点8  失点2  得失点差+6
 
2位:エクアドル   勝ち点3  得点3  失点3  得失点差 0

3位:スイス      勝ち点3  得点4  失点6  得失点差-2

4位:ホンジュラス 勝ち点0 得点1 失点5 得失点差-4 



 ホンジュラスが決勝トーナメントに進むための条件は、

 最終節でフランスがエクアドルに「1点差勝利」の場合、ホンジュラスはスイスに「4点差勝利」で、フランスがエクアドルに「3点差勝利」の場合、ホンジュラスはスイスに「2点差
勝利」で決勝トーナメント進出が決まります(ホンジュラスはスイスを抜くには最低でも「2点差勝利」が必要)。

 「そんな上手い話があるか!」「無理に決まってるだろ!」という声が上がるかもしれませんが、実はこのホンジュラスの状況は、意外と日本が決勝トーナメントに進出する可能性よりも高いかもしれないのです。

 このグループの流れを1試合目からずっと見て分析してきましたが、ホンジュラスが奇跡を起こせる可能性は充分にあると考えています。

 その根拠の1つに、フランスの異常な強さが挙げられます。僕はここまで全チームの試合を見てきましたが、「フランスが出場国中、最も良いサッカーをしている。ひょっとしたら優勝もあるんじゃないか?」とさえ感じています。それくらい、強い。遅攻の時はピッチの至る所に無数のトライアングルを形成して数的有利を作り、まるで練習で3対1を行ってるかのように1、2タッチのパスワークの連続で相手を崩していく様は、圧巻かつ華麗。そしてパスワークだけじゃなく、爆発的な前線のスピードを生かした速攻も脅威の破壊力。遅攻でも速攻でも得点できるハイレベルなサッカーに加え、FWには凄まじい決定力でゴールを量産する絶好調のベンゼマ…。今のフランスの攻撃は、どんな相手にとっても守るのは至難の業です。それが例えドイツやブラジルであったとしても。僕は今回のフランスのサッカーに衝撃を受けました。

 以上の事から「エクアドルがフランスに勝つ事は、まずないだろう」と予想します。そして、今のフランスならエクアドルに3点差勝利も充分、現実的に起こり得ます。何せ「堅守」が持ち味のスイスを完膚なきまでに崩しまくって5得点していますからね。ホンジュラスがスイスに「2点差勝利」で決勝トーナメント進出するための条件である「フランスがエクアドルに3点差勝利の可能性は、高い


 「ホンジュラスが奇跡を起こせる可能性は充分にある」と言える根拠の2つ目は、スイスの崩壊。前述したように堅守と安定感に定評があるスイスが、フランスにこれでもかというほどメッタ打ちに遭い、5失点しました。ホンジュラスは前半に退場者を出して10人になってフランスに3失点を喫しましたが、スイスは90分間を11人で戦いながらフランスに5失点。ホンジュラスにとってエクアドル戦の敗北はショッキングでしたが、スイスにとってフランス戦の5失点大敗は、それ以上にショッキングな出来事のはずです。スイスがホンジュラス戦までに精神的にも戦術的にも立て直せない可能性は、高い。またスイスはフランス戦の前半にDFが負傷交代し、代わって入ったセンデロスがミスで失点に絡むなど散々。もしホンジュラス戦でも彼が負傷で出れないなら、ホンジュラスにとっては追い風になります。ホンジュラスが決勝トーナメントに進出するための必須条件である「スイスに2点差以上の勝利は、今のスイスの状態を考えると、決して不可能ではないのです


 …と、このように「数字上」ではホンジュラスの突破の可能性は残されています。…が、あとは全て、自分たち次第です。

 正直言って、今大会のホンジュラスは良いサッカーができていません。ロンドン五輪で結果を出した、全員で走って相手選手に前線からプレッシャーをかけ自由を奪う【走るサッカー 】は、残念ながら今大会はここまで引いて守る時間帯が多く、あまり発揮できていません。僕が「注目選手」として挙げたMFエスピノサも、本来のボランチではなく左SHで起用され、ここまで彼らしいプレーはほとんできていません。フランス戦は前半に退場者が出てしまったのでまともな攻撃ができなかったのは仕方ないにしても、エクアドル戦ではそのフランス戦で退場したパラシオスが不在のため攻撃が全く組み立てられず、DFラインからロングボールを放り込んで「コストリー頼み」という単調な攻めに終始。4、5人の選手も、残念ながらW杯で戦えるレベルには達していません。


 マイナス要因を挙げたらキリがない。しかしホンジュラスはこれまでも、誰がどう見ても希望が見出せない絶望的な状況から這い上がって「奇跡の勝利」を収め、ここまできました。

 ブラジルW杯3次予選…。最終節のカナダ戦に負けはおろか引き分けでも敗退という厳しい状況、しかも当時は得点力不足で全く点が取れなかった中、それでもこの試合に誰もが予想しなかった「8-1」という記録的な大勝を収め、それまで首位だったパナマが弱小キューバにまさかの引き分けに終わるという幸運もあり、見事、大逆転で1位通過を果たしました。

 最終予選のアウェーのメキシコ戦でも、「負ければ終わり」という絶望的な状況の中、前半にミスから失点しながらも後半に2得点して魂の逆転勝ち。ホンジュラスにとってメキシコとのアウェー戦、聖地アステカスタジアムでの勝利は史上初だったのはもちろん、北中米カリブ海地区の国としても歴史上2チーム目の勝利という快挙を成し遂げ、2大会連続のW杯出場を果たしました。※詳しくは→【ホンジュラス、「ブラジルW杯2014」出場決定じゃああ!!


 このチームは「もう駄目だ…」という崖っぷちに追い込まれた時ほど信じられない力を発揮し、「奇跡の勝利」を収めて道を切り拓いてきた。

 2敗して決勝トーナメント進出なんて聞いた事がない?「ない」から、むしろ良いんです。「ありえない!がある!」のがホンジュラス。フランスとの初戦では「試合前の国歌が流れない」という前代未聞の出来事が起こりました。また、世界初の「テクノロジーによるゴール判定」も起こりました。良くも悪くも、ホンジュラスがからむと通常じゃ考えられない「ありえない!」事が起こるのです。

 難しいのは分かっている。だけど、「可能性」が1%でもある限り諦めず全力でホンジュラスを応援します。

 同じ中米の「永遠のライバル」であるコスタリカが「死の組」でウルグアイ、イタリアに連勝して決勝トーナメント進出し、今大会最大のサプライズを起こしました。同じ中米の国の活躍は嬉しい反面、凄く悔しいです。ホンジュラスは予選でコスタリカに1勝1敗でほぼ互角の実力を持つのに、なぜコスタリカにできてホンジュラスにできない…?また北中米カリブ海地区はアメリカ、メキシコも初戦勝利するなど、ここまで全チーム合わせて「勝ち点13」を荒稼ぎしています。アジアの「勝ち点3」と比べれば、その差は歴然…。そんな中で、ホンジュラスだけが遅れをとるなんて、恥以外の何物でもありません。アメリカには予選で1勝1敗、メキシコに至っては1勝1分と負けておらず、互角以上に渡り合っています。ホンジュラスにも彼らと同じような快挙を成し遂げられる力はあるんです。僕はホンジュラスを最後まで信じます。

 
 同じく厳しい状況に立たされている日本も、ホンジュラスと共に奇跡を起こしましょう!!


※エクアドル戦のコストリーのゴールの瞬間、ホンジュラス全土が巨大な歓声で揺れました。凄まじい歓声でした。ホンジュラスにとってW杯で実に「32年ぶり」のゴールの喜び。32年分の想いが歓声にこもっていました。写真を撮るのは治安的に怖かった(カメラを見られると強盗に襲われる確率が激増 )ですが、この日ばかりは撮らずにはいられませんでした。

コストリー32年ぶりW杯ゴール!



※フランス戦ではトラブルで流れなかった国歌も、この日のエクアドル戦では無事に流れました。ホンジュラスに携わっていると、普通なら「当たり前」の事に幸せを感じます 。ホンジュラス代表の選手は、フランス戦で国歌が流れなかった分、この日はありったけの魂を込めて歌っていました。ちなみにこの試合は平日の午後16時キックオフだったのですが、通常どこの仕事も17時くらいに終わるのを、政府が「今日は仕事は15時までに終了して帰宅し、代表戦を応援すべし」というルールを公式決定。これにより、本来ならあるタクシー乗り場のタクシーが全くなくて帰宅に困りました。サッカーの試合の応援のために政府が決まりを作るなんて、さすがホンジュラスです。「サッカー」がホンジュラスでいかに大きな存在かが窺い知れるエピソード。この国のために、僕は今後も全力で働いて貢献していきます!!

ホンジュラス国歌VSエクアドル




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