ショック…。でも、前向き。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

ショック…。でも、前向き。


※自身がGKコーチを務めるレアル・ソシエダ(ホンジュラスリーグ)の集合写真です。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -Real Sociedad 2013  1


 前回までのブログには、先月、行われた「壮絶プレッシャー」の先にあったもの。VS最強オリンピア、アウェー戦 までしか書けていませんが、今回はそこから4試合飛んで、「今日」の出来事を書かせて頂きます。話が前後して申し訳ございません。混乱なさらないよう、よろしくお願いします。

 「ツイッター 」や「フェイスブック 」には書いてきましたが、今日は自身が初めてホンジュラスに上陸した8年前の2005年に練習生として2ヶ月プレーしたマラトン との重要なアウェー戦した。当時のマラトンの監督は、現在、我らがレアル・ソシエダの監督であり、僕をチームに呼んでくれた恩人ハイロ・リオス 。たったの2ヶ月間、しかも練習生としてのプレーでしたが、当時のマラトンの選手たちとは、まるで「家族」のような固い絆を築きました


 いつか、必ずマラトンのアミーゴたちと、同じピッチの上で再会する


 僕の人生の中で、大きな大きな「」でした。マラトンを離れてからの8年間…世界のどこに居ても、ずっと想い続けてきでした。



 その夢が今日、実現する…。



 はず、でした。



 しかし…。



 今回のマラトンとのアウェー戦の遠征に、僕は帯同する事ができませんでした。

 理由は、こうです。現在、深刻な経営難に陥っているレアル・ソシエダ…。お金が無いため給料の支払いも滞り、一時は試合前に必ず行われる前泊も経費削減のために「行わない」と会長は決断しました。その決断は監督ハイロの「大事な試合の前に前泊を行えないのは勝敗に大きく影響する。何とかしてくれ」という必死の訴えで撤回され、前泊自体は行われるなりましたが、これまで前泊の朝食でホットケーキと共に必ず出ていたコーンフレークフルーツが経費削減のためカットされてホットケーキのみとなり、そして今回、僕の遠征先の宿泊費と食費も経費削減のカットの対象とならざるを得ない状況となり、僕は今回の遠征に「帯同できない」事となってしまったのです。


 ブログにはまだ書けていませんが、あの「最強オリンピアとのアウェー戦」の後に行われた4試合の流れでは、今回のマラトンとのアウェー戦普通に「帯同できる」はずでしたし、僕もそう信じていましたが…。まさか、チームの経済的な事情で行けなくなるとは…。逆に「帯同できない」と思っていたあのオリンピア、レアル・エスパーニャとのアウェー2連戦には帯同できる など、やはりホンジュラスは良くも悪くも期待を裏切ってくるし、何が起こるか分からない国…。一筋縄では、いかないそれを今、改めて痛感しています。


 今回、対戦するマラトンには、8年前に絆を築いたアミーゴが「6人」も居ました(ツイッターやフェイスブックでは「5人」と書きましたが、改めて数え直したら6人」居ました)。次から次に新しいタレントが出てきて、入れ替わりがメチャクチャ激しいホンジュラスサッカー界。特にビッグクラブであるマラトンは入れ替わりがかなり激しく、毎シーズン大量に選手が入れ替わります(昨年も10人以上、入れ替わりました)。そんな中で8年も前のアミーゴがまだマラトンで6人もバリバリに一線級でプレーしている(中国リーグからのり組も含む)…それだけでもう、奇跡」なのです。

 そのタイミングで、僕がレアル・ソシエダに居る。そして今日「マラトンVSレアル・ソシエダ」。マラトンの8年前のアミーゴ6人は軒並みもう30代…。来季も居るかどうか、分かりません。ホームでのマラトン戦は、すでに僕がチームに合流する前に、終わっています。彼らと「同じピッチの上で再会する」という夢を叶えるは、これが「最後のチャンス」だったかもしれない…。

 しかし、僕は、このマラトンとのアウェー戦に帯同する事ができませんでした。せいぜい、TV観戦するのみ。何よりも楽しみにしていた、何よりも待ち望んだ試合だったのですが…。


 
「夢」は実現しませんでした…。


 ハッキリ言って、ショックです。言葉では表現できないほど、ショックです。


 でも、僕は「前向き」です。いや、ショックなのですが、今回の出来事を、あえて「前向き」に捉えるようにしました。


 前述したようにもうマラトンとのリーグ戦の対戦は無く、今季中に「リーグ戦」で対戦する事は不可能です。ただし1つだけ、「今季中にマラトンとの対戦」を実現させる方法があります。それは「プレーオフ」。ホンジュラスリーグは、リーグ戦の最終順位の上位4~6チームでプレーオフを行って優勝を決めるのですが、ビッグクラブのマラトンはほぼ間違いなく、このプレーオフに進出してきます。つまり、我々レアル・ソシエダがリーグ戦で6位以内に入れれば、この「プレーオフ」でマラトンと対戦できる可能性があるのです!!

 「これは神様から与えられた試練だ。必ずプレーオフに進出して、晴れの舞台で『アミーゴとの再会』という『夢』を実現させる!!意地でも実現させる!!」


 そう、心に誓いました!!!!!!!!!!




 そして今日は、もう1つ、重要な出来事がありました。

 マラトンとのアウェー戦に帯同できなかった僕は、唯一、ホームのトコアに残った「コーチ」として、メンバー外の選手たちの練習を行いました。

 「GKコーチ」としてでは、ありません。「コーチ」として、メンバー外の全体練習を指揮する事になったのです。

 立正大学体育会サッカー部、アルビレックス新潟シンガポール、アルビレックス新潟ユースと、これまでのコーチのキャリアの中では主に「GKコーチ」としてGKのみを指導してきましたが、今回のように「コーチ」としてGK以外も含む全体練習の指揮を執るのは、初めての経験でした。確かに大学卒業後に母校の新庄高校サッカー部で「コーチ」として毎日、全体練習を指揮した経験はありましたが、「プロ」でそれを行うのは、これが初めてでした。

 僕にとってはレギュラーだろうとサブだろうとメンバー外だろうと、同じようにみんな「大切な選手」…。監督からは出発前に、今日メンバー外の選手たちに行う練習メニューも渡されており、監督不在の中でメンバー外の選手たちに監督の意図と戦術を浸透させる上でも非常に重要な練習でした。監督が居ない間の留守を守らなければならない責任ありました。

 結果、メンバー外の選手たちもしっかりと集中して高いモチベーションで取り組んでくれたので良い練習ができ、きちんと責任を果たす事ができました。練習後に監督から電話があり、今日の練習に関して報告。監督からは「ありがとう、Yoji」とねぎらわれました。

 マラトンとのアウェー戦に帯同できずに「夢」は叶いませんでしたが、「コーチ」としての幅は確実に広がり、また一歩、成長できたような気がしました。


 だから僕は、今日のショッキングな出来事も、「前向き」に捉えているのです。


 待ってろよ、マラトン!!

 待ってろ、マラトンのアミーゴたち!!

 必ずプレーオフに進出して、「夢=アミーゴたちと同じピッチの上で再会」を実現させる!!

 そして、マラトンを、アミーゴたちを倒して、自分の成長を証明してみせる!!


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -Real Sociedad 2013  2



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