全く、予想だにしなかった展開…。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

全く、予想だにしなかった展開…。


※自身がGKコーチを務めるホンジュラスリーグのレアル・ソシエダの監督であり恩師であるハイロ・リオス&アシスタントコーチのオラシオ・ロンドーニョと、練習前にスタジアムにて。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -con Jairo y Horacio 2013



 怒涛のように試合が続いていて、なかなかブログの更新ができません。書きたい事は上の写真のスタジアム裏の山ほどあるのですが…。ちなみに上の写真が、我々レアル・ソシエダのホームスタジアムです。大自然に囲まれた壮大な景色が見えるスタジアムで、サポーターも熱くて温かいし、とても気に入っています。

 実は今日も、先ほどまで試合がありました。今日の試合が、自身がチームに合流してから、5試合目(全てリーグ戦)。今日の試合についてはまた日を置いて書くとして、まずは先月末に行われた「ホンジュラス最強チーム、オリンピア」、「ホンジュラス4大ビッグクラブの1つ、レアル・エスパーニャ」との、「人生をかけた壮絶なアウェー2連戦、6日間の遠征」について書いていきたいと思います。


 自身がチームに合流して初日に迎えた最初の試合は、それまで「無敗で首位」を走っていたヴィクトリアという強豪チームに対してホームで「2-0」完封勝利。正に「最高のスタート」を切りましたが…。※詳しくは→【一生、忘れられない、瞬間

 続く2試合目は、残留争いをするプラテンセというチームとの直接対決。勝利以外は許されない試合でしたが、これまで無敗を誇っていたホームでまさかの「0-1」敗北…。残留争いはもちろん、2連敗しただけで首が飛ぶ事がしょっちゅうあるホンジュラスサッカー界…自身の立場も、崖っぷちに追い込まれました。※詳しくは→【痛恨…。でも、諦めない!!


 こういった厳しい状況下で、今季まで前人未到のリーグ3連覇を達成し、過去の優勝回数も圧倒的に歴代最多を誇る、ホンジュラス最強チーム「オリンピア」(Olimpia)、「ホンジュラス4大ビッグクラブ」の1つである「レアル・エスパーニャ」(Real España)との、「中2日アウェー2連戦」という、壮絶なる試練を迎えました。



 オリンピア戦、前日…。※2013年2月23日(土)

 午前練習の後、オリンピアの本拠地である首都テグシガルパに向けて出発します。…が、僕はチーム幹部から「今回の遠征には帯同せず、残り組の練習と練習試合を見てくれ」と言われ、トコアに残る事決まっていました。

 僕としては当然ながら遠征に帯同し、チームの生き残りを懸けた大事な大事な試合に貢献したい…。しかし、残り組の練習や練習試合も同様に大事。僕はチームの決定に従うのみ。残り組の練習と練習試合に全力を尽くす事を誓います…。


 出発直前。遠征メンバー1人1人、全員と握手を交わします。「Yojiは何で行かないんだ?」と多くの選手から聞かれましたが、「チームの決定だ。俺は行けないけど『魂』だけはみんなと一緒に行って戦う。チームの勝利をトコアから祈っている」という言葉をかけ、遠征メンバーを見送りました。

 去り行く遠征メンバーを乗せたバスを横目に、見送りを終えた僕は1人、帰宅します。自分も遠征に行きたかったが…仕方ない。プラテンセ戦の後の1週間、やれる限りの準備はしてきた。GKは最高の状態に仕上がったと信じているし、必ず試合で最高のプレーをしてくれると信じている…。


※毎日、共に汗を流すレアル・ソシエダのGKたちと。計り知れないポテンシャルを秘めたGKたちです。練習もよく言う事を聞いてくれ、集中して全力で、僕の事を信じてやってくれています。僕には彼らを成長させ、試合で良いプレーをさせ、チームとしても結果が出るようにしなければならない「責任」と「義務」があります。そのために、ここに来たのです。それができないなら、僕がここに居る意味はありません。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -con porteros de RS 2013!



 遠征メンバーを見送った後の、帰宅途中の帰り道…。

 偶然、レアル・ソシエダの会長(チームの最高責任者)とバッタリ、出くわします。

 こちらが挨拶をすると…。


 会長:「Yoji、お前は一体、ここで何をしているんだ!?」

 僕:「遠征に行くメンバーを見送って帰宅するところだけど…」

 会長:「いや、そうじゃなくて、何で遠征に帯同してないんだ!?」

 僕:「何でって、チーム幹部からトコアに残るように指示されて…」

 会長:「誰がそんなバカな指示をしたんだ!?Yojiは遠征に行かなきゃダメだろ!!」

 僕:「そうは言われても…。チームの決定だし…」

 会長:「関係ない!!俺はYojiの遠征先の部屋も食事もすでに予約しているんだ!!」

 僕:「ええ!?そうなの!?けど、もうバス、出発したし…」

 会長:「YojiはGKコーチとして絶対に行かなければダメだ!!試合のアップもしなきゃダメだろ!!今すぐ荷造りをしろ!!今から行くぞ!!」

 


 ええええええええええええ!!!!!?????




 こうして、何が何だか訳が分からぬまま、会長の側近の車に乗せられて家に戻って荷造りをさせられ、「Yoji、しっかりシートベルトしとけよ」と言われると、僕の33年間の人生の中で車最速の「170km」でブッ飛ばして遠征メンバーのバスに追い付き…本当に、何が何だか訳が分からぬまま…僕は遠征に帯同する事となってしまいました。

 つい先ほど見送った遠征メンバーたちと、バスの中で「まさかの再会」…。「ありえない!がある!ホンジュラス」とは言え、この展開は全くもって予想だにしてなかったので、ビックリを通り越して何かもう訳が分からんとしか…。ただ、日常からありえない事だらけで慣れているのか、遠征メンバーたちは僕がまさかの合流をしても、「おう!Yoji!」と意外と普通のリアクションという…(みんな、あまり驚いていない)。

 レアル・ソシエダの会長は、僕の事を高く評価してくれています。全ての決定を下すのは、チームの最高責任者である会長であり、その会長が僕の事を高く評価してくれているのは、非常にありがたい事。今回は、その会長の言わば「鶴の一声」で、本来は遠征に帯同しないはずだった僕が急遽、飛び入りで遠征に帯同する事になったのです。

 元々「遠征に帯同してチームに貢献したい」と思っていたので、帯同できたのは嬉しかったですが、その反面チームとしては僕は「帯同しない」事になっていたわけで、これでもし翌日の試合に敗れるような事があれば…「Yojiが来たからだ」と、全て僕のせいにされてしまうという、とてつもないプレッシャーがのしかかる事となってしまいました…。何という展開…。



 これも神様から僕に与えられた、試練なのか…?

 果たして、この試練を乗り越える事はできるのか…?



 ホンジュラス最強チーム・オリンピアとの、正に「人生をけた、絶対に負けられない戦い」が始まる…。



※6日間にもおよぶ遠征の最初の目的地である首都テグシガルパの宿泊先のホテルから見える景色。今回チームは良い結果を出すために、代表クラスでも滅多に使用しないほどの最高級ホテルを手配してくれました。それはそれで喜ばしい事でしたが、結果が出なければ「来る予定じゃなかった人間」=「Yoji」の責任になるという、壮絶なるプレッシャーが僕にのしかかりました…。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -en Tegus!2013.2.24
 


つづく



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