冒頭のタイトルは筆者がプロボクサーを志していた頃に通っていたボクシングジムを主宰していた輪島功一会長の現役時代の至言である。
輪島会長は現役時代にジュニアミドル級の世界タイトルを3回獲得した。
それはそれで凄いことではあるがいいことばかりでもない。
プロボクサーにとって1番の理想というのはミニマム級の絶対的な王者だったメキシコのリカルド・ロペスのように、全勝でタイトルを獲得して、それを20回以上ずっと防衛することだ。
そして自身が防衛を続けることによりチャンピオンベルトの重みに箔をつけられることが、ボクサーにとっての究極の目標だ。
そのため3本もベルトがあるというのは、ウラを返せば2度負けているということでもあり、それは喜ばしいことではない。
そうした中で、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)するプロボクシングの世界。
勝ち名乗りを受けることでしか自らのボクサー生活を続けることができないプロの格闘技という厳しさ。
そうした中で、一旦はタイトルを獲得した輪島会長も防衛戦で勝利しないと、本当の意味でのビッグマネーを稼げない仕組みなので、練習に練習を重ねた。
それはまさに「血のションベン」が出るほど過酷な練習だったという。
しかし輪島会長は防衛戦で敗れて無冠になった。
契約上、再戦という名の最後のはチャンスは残っていた。
このチャンスを生かすためには導き出された結論が、冒頭のタイトルにある「試合前、休む勇気」である。〈②に続く〉