冒頭の川柳は箱根駅伝の名門校である山梨学院大学駅伝部監督の上田誠仁(うえだ・まさひと)監督の言葉である。

この言葉ほど現代のスポーツビジネスという世界観をリアルに描写している言葉もない。

そもそもなぜ現代人(特に男性)というのは、野球でもサッカーでもスポーツの勝敗を見に試合会場へわざわざ足を運ぶのか?

別段シュートが決まろうが、三振を取ろうとが、ホームランが出ようが出ようが、自分の昇給や出世というモノに響くわけでもないのに。

基本的にスポーツの存在意義というのは、試合に勝つという行動を通じて、対戦相手に精神的なマウンティングをかけて「お前は俺より存在が上だ」というアピールをすることができる。

だから皆何の種目であっても貴重な金と時間を割いて、試合会場で贔屓のチームの応援に喉を枯らすのである。

今の時代、相手に勝つためで実際に馬乗りしたら、警察直行になってしまう。

価値観の多様化する社会の中で、高級なスポーツカーや装飾品にも、価値観の違いという壁が、マウンティングの役割を果たせなくなった世の中になっているのも事実だ。

こうした、現代人が他者に対する優位性を強調したい。

けどその強調するための基準と手段がなかなか見いだしづらい世の中で、精神的なマウンティングを可能にしたのが、現代の「プロスポーツ」という世界である。

しかしそのプロスポーツも冒頭のタイトルにあるように「おごるなよ 丸い月夜も ただ一夜」なのである。1つの勝利で相手に効かせられる優位性の賞味期限というのは1日だけなのだ。

②についてももう少し掘り下げていきたい。