これまで日本出身選手のFリーグ得点王といいながらも、その選手や試合会場など周辺環境に対しての説明に終始してきたが、今回の④ではいよいよ試合に入っていきたい。
フットサルはゴレイロ(GK)入れて5人でプレーする室内のサッカー。そうした競技のプロスポーツであるFリーグで地元のすみだは2位、府中は4位とどちらもプレーオフ圏内。
またプロスポーツだとチーム運営が厳しいと外国出身選手を雇えないところもフットサルに限らず多いが、すみだは1人、府中は2人の外国出身選手と契約している。
そうしたプレーオフでの有利な立ち位置を確保したい両チームの思惑が交錯する中でのキックオフ。普通のサッカーでもそうだが、両チーム共に上位進出が懸かっている重要な試合だと試合の入り方が慎重に守備的になるものである。
そのため試合会場のコルリ(コールリーダー)だけが頑張っている、初めてフットサル観戦した観客には一番良くない得点が動かない展開が続く。
しかし、前半終了間際にすみだのフィクソ(MF)が府中の緩慢なパスをカットしてピヴォ(FW)に縦にボールを入れてカウンター。これをしっかり決めてホームすみだが最高の時間帯に先制し、前半を折り返した。
後半に入り、劣勢の府中がギアを上げる。今回のブログ記事の主人公(?)・Fリーグ得点王を目指す13番のピヴォ・渡邉知晃にパスを供給するもすみだのアラ(DF)が組織的な包囲網を張りつつ、身体も張ってなかなか決定機を作らせない。
するとまたもすみだが77番のブラジル人ピヴォであるボラのパスカットからゴレイロとの1対1になって2点目。ハロウィンデーでコスプレしている地元すみだのサポはお祭り騒ぎ。
しかし、Fリーグでゴールを量産する日本出身の点取り屋がこのまま終わるワケがなかった。
この府中の背番号13番を付けたゴールゲッターが得意な形というのは柔らかなタッチのパスを受けて胸トラップからの反転シュートだという。こうした形というのはフットサルだとブラジルなど外国出身ピヴォが得意なイメージが筆者にはあって、事実昨シーズンはすみだの試合で前述のブラジル出身ピヴォであるボラがそうした形でのゴールを決めたのを覚えている。
しかしこの日、渡邉が選択した形というのはそうした曲芸師のようなサーカスプレーではなく、サバンナを駆けるチーターのように俊敏な抜け出しと相手の動きへの読みで勝負した。その中で渡邉が具体的に選択した手段はすみだのアラ、すなわちサッカーで言うDFへのウラを取る動きのタテに鋭い飛び出しであった。
2点リードになって若干空気の緩んだすみだのFP(フィールドプレーヤー)の呼吸を読んだ鋭い背後への抜け出しでゴールを決めてまずは1点差に。
その後、慌てて試合を立て直したすみだが試合を決めたかに見えた3点目を決めて、またも墨田区体育館は緩んだ空気の中になった。
しかし、リスタート直後に府中FPが数的優位を作ったパス交換から味方がタテの意識を強めたボールを供給する。そこから渡邉がゴール前へのゴレイロの懐にまるで往年のマイク・タイソンのようなステップイン。まさに瞬間移動!これも1点目と同様の形でゴール‼︎府中は点取り屋のゴール量産で再び1点差に。
地元のコアなすみだサポからすればヒヤヒヤな状況だが、初めて会場に来た一見さんから見ればアゲアゲな最高のボルテージになる攻守の切り替えが多い白熱した試合展開に。
結局、試合はこのまますみだが最小得点差を維持したままタイムアップで薄氷の勝利を手に入れた。
今回は9年ぶりの日本出身選手のFリーグ得点王を目指すベテラン31歳のピヴォである渡邉知晃のプレーを見に行ったワケだが、この渡邉のウラへの抜け出しというのは、今年観戦したサッカーJ2だと水戸ホーリーホックの韋駄天FWでJ1スカウトが食指を動かす弱冠20歳のドリブラー・前田大然の動きのキレに似ていた。
こうした動きは渡邉本来の得意なプレースタイルではないのは承知だが、Fリーグ得点王というのは歴代のJ2のハイレベルなFWのプレーにも遜色ないということを目の当たりにできて、室内競技とはいえ雨の中で会場に向かった甲斐があったフットサル観戦だった。

