①では筆者が職場の同僚との雑談からプロ野球という日本を代表するプロスポーツであり国民的な娯楽が、実は少しずつしかし着実に地盤沈下が進んでるという話をした。
筆者も野球が価値観のメインという訳ではないが、地盤沈下が進んでもらっても困る。ではプロ野球ファンは増えているのに、野球少年という筋書きのないドラマの主人公たちの数がグラウンドから減っている3つの理由を結論から述べたい。
①急速な少子化
②その中で野球を選ぶ子供の減少
③学校を卒業した後の野球選手がプレーを続ける場の減少
①では広く言われている少子化である。少子化の原因については、筆者自身が人口経済学者ではないので理由が分かる訳でもない(筆者自身が親や上司からの結婚の突き上げをスルーして言うのも何だが)。ただ筆者自身にも言えることだが、子供を1人養うにも多額の費用と時間や手間ヒマを要する一方で、現在の成人男性の平均収入の低下でそうした人の大半が子供を養えない現実がある。
野球という狭い世界に限らず、男女計100人が50組いて、その夫婦が代々1人しか子供を作れなかったら100人→50人→25人→12(.5)人になり、これからひ孫の代には日本は10分の1強の人口しか維持できなくなる。だからこれから野球の世界もドラフト会議が不作続きになるのもうなずける。
②では野球をやる子供そのものの減少である。「野球崩壊 深刻化する『野球離れ』を食い止めろ!」(広尾晃・2016年・イースト・プレス刊)にも詳細はあるが、この数年で野球をやる子供自体が減っている。
2009年には軟式野球スポーツ少年団の団員数が173,978人だったのが、翌2010年には168,512人、2015年には118,044人まで減少している。サッカー少年団の方は2010年から2015年の間に147,881人から127,908人と、こちらも少子化で減少傾向にあるが減少率自体は低い。
最近では元球児だった父親が子供に野球をやらせようと思っても、母親や子供がサッカーや他競技を選ぶケースも増えている。
尚、このデータで少年野球も同年代のサッカーに競技人口が逆転されたことがわかるが、中体連での競技人口も同様の傾向にあることも併記しておく。
③はそうした中でもプレーを続けた野球部員も、学校を卒業したら競技活動を続ける場そのものが減少している現実である。
JABA(日本アマチュア野球連盟)のHPによれば、1998年(平成10年)には142もあった会社(社会人野球)の登録チーム数が、2017年(平成29年)には88まで減少している。
もちろんクラブチームは201から261と増加していて、これらの2つのカテゴリーを合わせれば343から349と社会人という立場でプレーする選手のチーム自体は微増ではある。
しかし敢えて言うが、大企業が選手の福利厚生を支えてくれていた社会人野球と選手自身がお金を出しあってチームを運営するクラブチームとでは、選手自身がどちらがプレーに専念できる環境なのか?といえば言わずもがなである。
今この記事を書いているのは2017年10月28日であるが、今の日本企業は東芝の半導体事業売却や日産・スバル・神戸製鋼の不祥事など、かつての大企業が自身の存在意義を低下させているニュースを賑わせている。
この中でも(神戸製鋼はラグビーだが)、東芝や日産はかつては都市対抗野球でチームを保有していた企業でもあった。しかしこの2つの社会人野球チームは今は存在しない。
昨今のそうした事情から独立リーグの存在もクローズアップされているが、筆者がこの年観戦した2016年・独立リーグ日本一の群馬ダイヤモンドペガサスでも球場はガラガラだった。
今回は秋のプロ野球の話から、実は日本の国民的な娯楽が崩壊の危機にある、という話をした。プロ野球の球場自体は今でも賑わっている。
しかし、実はこのままだとプロ野球の終わりは近いのかもしれない。しかしまだ終わっちゃいない。まだ今ならまだ間に合う。このままで野球を終わらせてはいけない。
