今回は20年以上ボクシング界と関わってきた筆者が、今のボクシングがいわゆる「オワコン(過去の遺物となった娯楽)」になる危険性を孕んでいる、という話をした。この先も続けたい。

先日、試合の合間に見ていたツイッターでキックボクシング界のスター選手からボクシング界に転向した後に日本王者まで上り詰めた、土屋修平(引退)のコメントを読んだ。

筆者みたいな半端者が指摘しても負け犬の遠吠えに聞こえるが、リング上でベルトを手にしたボクシングエリートの発言には、同じ内容を話していても、重みが全然違う。

土屋氏はボクサーのチケット手売りという昭和の手法が、日本のボクシング界が低迷しつつある、という指摘をした。

実はこれってボクシング漫画「はじめの一歩」で主人公の対戦相手である選手が指摘していたことと(掲載時の1991年から)ほとんど変わっていない。

要はボクシング界はこの激変するスポーツ・コンテンツの環境に完全に取り残されている、と土屋氏も指摘している。

また前述の話だとチケット代の値段も高止まりだ。

筆者が観戦しようとした、今年(2017年)の年末に1つ見たい日本タイトルマッチがあった。

しかし、そのチケットは1番安くて5000円もするベラボーな値段で、結局筆者は試合観戦を見送った。

この年末は野球やサッカーなどの日本代表の試合が東京で集中していたが、野球の侍JAPANやサッカーのサムライブルーのチケット代も安くはないが、5000円払えば、見やすい席でもお釣りが出る。

これらの試合は観戦に行ったら、職場の同僚と話題になるようなチケット代に見合うだけの注目度の試合だが、翻ってそれよりも高いチケット代のボクシング日本タイトルマッチに、それだけ訴求力のあるコンテンツなのか?話題性があるのか?という話である。

よくアスリートの引退後の失敗する選手は過去の栄光にすがっていて、成功する選手は過去の栄光から決別して、1から新しい仕事のキャリアを構築しようと未来を見据えている、というが、ボクシング界のなんちゃってビジネスは明らかに前者の過去にすがった殿様商売である。

今の時代、スマホ1つで家から出ずとも、時間が許せば半永久的にヒマを潰せる時代だ。

そんな中で、ただでさえ怖いイメージの後楽園ホールに足を運んでもらって、塩試合含めて観戦してもらうのは、一般のライト層の開拓に今のボクシング界は高すぎるハードルの状態である。

ボクシング界は自分たちのビジネスモデルが破綻していることを自覚しないと、ゆでガエルのように、気づいたらもう遅かったというのも考えられる。

ここで危機意識を持って経営しないと、ボクシング界に勝ち組はいない世界になる。

拳士たちのファイトマネーが潤って、ファンにハードルの低いチケット代を目指す時代になったのだ。