④ではこの試合のメインイベント(お笑いで言う「トリ」)が始まった。

赤コーナーの中国選手団の総大将であるWBCアジア王者でWBAインター(二軍)王者の中国は新疆ウイグル自治区出身の無敗(12勝5KO1分け)のバイシャンボ・ナスイウラに対して、日本ではスーパーフェザー級の元日本王者の内藤律樹(17勝6KO2敗)。

前日計量ではバイシャンボが内藤の頭にチョーパンを決めて、不穏な空気を醸し出した後の試合。そうした経緯の中でメインのゴングが鳴った。

試合の入り方で主導権を握り、快調なスタートだったのはサウスポーの日本人だった。

軽快なフットワークで広いリング全体を使い、ボクシング界で言われる「四角いリングを丸く使う」という言葉通り、前の手(サウスポーの右ジャブ)の差し合いで内藤は有利に立つ。

バイシャンボはおそらくこうした一流の闘牛士のようなフットワーカーとの対戦歴がなかったのでは?と感じる。

こういう内藤みたいなアウトボクサーにリングを広く縦横無尽に使われたら無骨で直線的な動きの突貫型の拳士はなす術がない。

自分がバイシャンボ側の陣営なら、ある程度ガードを固めて前進し、内藤にパンチを打たせて引きつけて、タイミングを見計らって体格差を活かしてロープ際やコーナーに押し込んでフットワークを封じた形から連打して逃がさない、という戦術を選ぶ。

しかし、この中国人拳士はゴリゴリの軍鶏の喧嘩、いわゆる「どつきあい」では無双なのだろうが、内藤のようなトップレベルのアウトボクサーとの経験値がない。

そのためこの中国人拳士にはサッカーでいうマリーシアのような、勝負事で必要な狡猾な駆け引きを知らず、ボクシングそのものが真っ正直過ぎた感がある。

淡々とラウンドが進み、判定へ。内藤のフルマークの判定勝ちと思ったら、意外にも2-1のスプリットデシジョンで元日本王者に凱歌が上がった。

今回は筆者が中国語を始めて20周年という節目の年に2017年3月の野球WBCの日本vs中国戦に続く、プロボクシング・日中対抗戦。年末にはサッカー日本代表の東アジア選手権(E-1選手権)で中国代表も来日する。

そうしたことに筆者自身が勝手に宿命めいたものを感じつつ、初めてのプロボクシング・日本親善試合の内容に手応えを感じながら家路に着いた。

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内藤律樹(中央)

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バイシャンボ(赤)