①ではフランスの名門フットボールクラブと日本の伝統プロ野球球団から「ホーム」スタジアムとは何か?という話をしたが、②ではこれをもっと掘り下げていきたい。
ホームすなわち「家」や「家族」という概念からプロスポーツを捉える上で、①で筆者が述べたことは心に嘘がないのは事実だ。
しかし、「同じ家族がいい」「定住がいい」と言っても物理的にそれができない人や家族がいるのもまた事実。
例えは悪いがDVで悩む弱者が奴隷契約を望むパートナーと生涯を共にしていいわけではないし、睡眠時間を削りメンタルヘルスを崩してまで終身雇用が一番というわけでもない。
スタジアムも同じように、札幌ドームにおける北海道日本ハムファイターズのように、第3セクター経由で札幌市が球団に200億円の改修を求めたり、食品会社なのにドーム内の飲食店展開に制限を加えられたりして、球団が札幌ドームに執着するメリットはないわけであって、(詳しくは漫画「球場三食〈きゅうじょうさじき〉②」に載っている)、そうした理不尽なパートナーにやみくもにこだわる合理性もない。
しかしそれでも、「ホーム」スタジアムが「自宅」足り得るためには安易な移転というのもまたチームにとってマイナスである。
西鉄に去られた福岡市や大洋やロッテ・ヴェルディに去られた神奈川県川崎市、ジェフに去られた千葉県市原市というのは、地元自治体や住民の心に、去ったチーム本体には分からない忸怩(じくじ)たる気持ちを残していることに気づかないモノだ。
ジェフが去ったあとの当時の市原市長もスタジアムの改修費用に市の血税を投入したのに、チームに去られて金だけ消えたという現実が残ったという話もある。
ジェフサポの筆者としてはずっと市原市にチームが残るのもキツいが、さりとて今のジェフやヴェルディが移転先の自治体で自分たちのチームがその土地に根付かず、成績も下降線という現実があるという事実も一方で存在すると、①のラシンパリのようなスタジアムのキャパありきの移転というのが果たしてどういうモノか?というのも考えさせられる部分もある。
サッカーJ3に目を向けると北九州のミクスタや長野の長野Uスタジアムのように、新スタジアム移転による集客が倍になったチームもある。北九州の旧本拠地である本城のようにJ1のスタジアム基準に適合しない会場というのも考慮すれば、新スタジアムというのは筆者はむしろ賛成である。
しかし、ジェフの新(と言っても2005年完成だが)スタジアムであるフクダ電子アリーナ(フクアリ)のように、サポの身で利便性という恩恵を預かっていながらこういうことを言うのもなんだが、事情によっても配慮は適宜必要だが、「ホーム」スタジアムというのはあくまで自分たちの「自宅」であり、地味でキツい地元でのファンサービスを疎かにして、本拠地移転という甘い夢を見るのも、サラリーマンが転職に夢見て実行しても、現実を見ていなくて失敗してしまうのと同様に、全てが上手くいくとは限らないのを、プロスポーツチームのフロント職員は肝に銘じてもらいたい。
崇高な夢と甘い現実逃避というのは似て非なるモノだ。