①では日本経済を取り巻く環境とそれによって今まで日本経済の勝ちパターンであった企業城下町というスタイルの行き詰まりを述べてきたが、②ではこのブログらしくスポーツビジネスと企業についての関係性について述べていきたい。
筆者は現在、某大手企業の子会社で働いているが、そこの同僚に昔、親会社にあった女子バスケットボール部の私設応援団をやっていた人がいた。
その人のチームに対する思い入れを聞くと「日本のスポーツは『地域密着』というより『企業密着』なんだな」と強く感じるようになった。
もちろん、その人がやっていることは悪いことではない。ただ1990年代以降言われてきた、日本スポーツ界で言われる地域密着というお題目は想像以上に浸透しづらいモノだとも感じた。
しかし、そうした会社の女子バスケ部も現在は経営の合理化により休部になった。
また以前読んだ社会人サッカーの本で物流大手の佐川急便のサッカー部が、(企業城下町とはニュアンスは若干異なるが)東京と大阪の営業所にそれぞれチームを持っていて、営業所対抗によるライバル意識からチームを強化していき、ついにはアマチュアサッカー最高峰のJFL(現在は4部リーグ)で優勝するまでのチームになった。
しかし、これものちにチームを滋賀に一本化するも、佐川急便本社は経営の合理化とアマチュア全国リーグでの優勝を区切りとして、チームを解散させた。
こうした企業の経営の合理化やかつては日本経済の必勝パターンの1つであった企業城下町という街の衰退により、日本の企業城下町の低迷というのは、地域の雇用の喪失に繋がり、ひいては日本のプロスポーツの低迷にも繋がるのでは?と筆者は強い危機感を感じている。
日本人というのは以前ほどではないが、会社に対する所属意識が他の国より強い傾向にあった。そうした意識を上手く活かして日本の企業スポーツも発展した時代もある。
しかし、世界に冠たる日本の大企業でもあっさり倒産し、タイトルにある企業城下町も仕事がなくなり、これまでの仕事に対する価値観が通用しなくなった。
そして、転職も普通になり拠点も流動的になり、日本人自体が自分の会社や地元に対する意識が希薄になった時代である。
そうした中での日本のプロスポーツ界は、日本社会が新しいフェーズに移行しつつある時代への一歩踏み込んだ形での地域密着を模索して行かなくてはならない。
鎌倉時代の歌人・鴨長明の「方丈記」にある一節で「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし(ゆく川の流れは常に変化し続け、一度たりとも同じ形だったことはない。人間の社会も同様でずっと同じ社会構造や価値観というのもあり得ない。時代に合わせて人は常に変化する必要性がある)」とあったが、平成の21世紀にも同じことが通用する。
企業経営もプロスポーツの在り方も新たなやり方が必要になる。