筆者は基本的にこのHPでスポーツビジネスのことについて書いてきているつもりだが、読んでいる文献というのはスポーツだけではなく他産業など多岐に渡る。

そうした中で先日も、クールジャパンで米ドルや人民元が多数国内に流入しているアニメ業界や、それまで課題の克服が難しいとされていたインターネット通販が成功して業界の勢力図が大きく書き換えられたアパレル業界の資料も読んだ。

しかし、これら2つの業界というのはこれから詳しく説明していくが、若者の「夢」や「やり甲斐」という口当たりのいい言葉で若い人材を使い捨てにして、搾取して利益を貪るという意味ではアニメもアパレルも共通する。

翻ってこのブログはスポーツビジネスだが、プロスポーツ界だと筆者が長年携わってきたプロボクシングの世界もこうしたアニメやアパレル同様に若者に夢ややり甲斐という言葉で誤魔化して搾取している、という意味では共通している。

ではこのアニメ、アパレル、ボクシングと本来なら何の脈絡もない3つの世界が共通しているのは具体的にどういう部分なのか?というのをフォーカスしたい。

まずアニメからいきたいが昨年(2016年)名作アニメ「君の名は。」がモンスター級の大ヒットに成功し、興行収入もジブリアニメの独壇場だったランキング内の2位(2017年3月時点で246.5億円)と近年日本の製造業の海外での不振にとって変わる新たな外貨獲得手段としてアニメが注目されている。

しかし、その「君の名は。」のプロデュースしたアニメ制作現場の代表は我が世の春であるアニメ業界に対して、「人を雇用し育てなければアニメ制作はダメになる」と警鐘を鳴らした。


その警鐘を鳴らす理由とは何か?それは現場の制作サイドの搾取の構造が旧態依然のままだからだ。

アニメ制作現場だと駆け出しの動画担当の年収は平均で111万円だと言う。そのためこうした下積みのアニメーターのほとんどは親のすねかじりをしないと生活できない状況なのである。

今のアニメ業界を取り巻くテレビ局や出版社、広告代理店や商社がアニメを利用して利益を貪るという縮図というのは若いアニメーターの搾取の構図によって成立し、一部の良識あるアニメ制作現場の関係者はこうした「誰かの不幸によって成立する幸せ」というのが、早晩破綻するという危機感から搾取される業界の若手の救済策を思案しているのである。


今回は一見するとスポーツビジネスとは関係ないジャンルに思われるかもしれないが②以降に繋げるつもりなどで、今後の記事にも興味を持ってもらいたい。