①では近畿地方の格闘技会場から日本のネーミングライツの問題点を追求していったが、②では自分の地元の千葉県からこの問題を捉えていきたい。

筆者の職場にはプロ野球ファンが多くいたのだが、そこである巨人ファンの同僚と野球談義をしていた。

「えっと…、千葉ロッテの球場で」

「QVCでしょ」

「いや、QVCはネーミングライツが切れて別の企業が買い取った。どこだっけ?」

「じゃあ、マリンスタジアムでいいよ」

と、こんな具合の会話をしていた。

現在、マリンスタジアムのネーミングライツはインターネットの衣料品通販で急成長しているZOZO TOWNという企業が球場名を買い取り、公式の球場名として一般の報道もされている。

しかし、創業者が千葉県出身で千葉に愛着を持つ人間が地元の球場にネーミングライツの費用を出すのは良いが、上記の例を見れば分かるように、命名権を買い取った企業が本当にモトを取れているのか?という話である。

日本のネーミングライツというのは目先の利益ばかりを考えて契約期間が短く、施設と名称のイメージが一致する前に出資企業が撤退するパターンが跡を絶たない。これでは企業側も施設側も誰も得しない。

しかし卑近な例で恐縮だが、筆者が応援しているサッカーJ2ジェフ千葉のホームスタジアムであるフクダ電子アリーナ(通称フクアリ)は、ホームのジェフ千葉がしょうもない試合ばかりしてJ2にいるのに2005年のスタジアム開業以来、10年以上ずっとネーミングライツを変えていない。

これはありがたいことであるし、本来のネーミングライツの趣旨というのはこのように長く企業が地域に根を下ろして、地元住民に自分たちの名前を定着させるところに意味がある(余談だがサッカースタジアムなのにアリーナと名乗るのは「フク」が「アリ」ますように、と掛けているからである)。

そういう意味で日本の企業や自治体の多くは欧米から来た概念であるネーミングライツという権利を理解しないまま、表面的な形での名称変更ばかりしている。

しかし、企業トップの経営に長いスパンでの大局観が必要不可欠なように、日本のスポーツビジネスにおけるネーミングライツにもまた長いスパンでの命名権取引が必要である。

そうした考えが実際に試合をした時の会場の名称が「伝説の試合の証明」になるのだから。