今回はタイトルにあるようにボクシング観戦歴のひとつの区切りとして見に行った有明コロシアムでのトリプルメインの世界戦。
そんな世界戦の二番手は日本ボクシング界に礎を築いた名王者・具志堅用高の後継者「カンムリワシ2世」がリングに見参した。
その男の名は比嘉大吾。かつては一時代を築いたものの最近は世界王者が生まれていないかつての名門・沖縄ボクシング界の復活もこの2つの拳に託されている。
この比嘉の凄いのはパンチ力。この試合前の時点で12戦12勝12KOといわゆるパーフェクトレコードというヤツだ。
こうした戦績のボクサーの対戦相手というのは噛ませ犬が多いと思われるが、比嘉の場合には当てはまらない。2015年7月には日本人ボクサーにとっての敵地タイでユース王座ながらも、地元期待のホープを自らの拳で粉砕。日本のボクシング界がネット上で大騒ぎになるくらいの快挙だった。
2016年7月の後楽園ホールでの東洋タイトルでは世界タイトル挑戦経験もあるフィリピン人王者を5回キャンバスを舐めさせ、王者のプライドを叩き潰しベルトを「強奪」した。
そうした沖縄のみならず日本中のボクシングファンの期待を一身に背負う若き強打者の満を辞しての世界挑戦。しかし、試合前日にトラブルが発生した。
挑戦するはずのメキシカンの世界王者ファン・エルナンデスが、フライ級のリミットである50.8kgをパスできず計量失格。この時点でエルナンデスの立場は「前」王者になり、比嘉が勝った時のみ戴冠という変則タイトルマッチになった。
試合前日の計量をパスするのはボクサーにとって最低限の相手に対するマナー。それすら守れない前王者の攻撃など、21歳のオキナワンにはもはや敵として映っていなかった。
試合のゴングがなり、前王者は左右へステップして比嘉の強打をいなそうとし、実際その変幻自在のステップワークというのは、腐っても鯛ではないが一度は世界のベルトを腰に巻いた経験のあるボクサーのそれだった。
しかしこの日の比嘉は役者が違った。上から覆い被さるような強烈なプレッシャーから、前王者の体力を削いでいって、計量後にしこたま食べたであろう消化器系の急所に強打を雨あられと打ち込む。2、4ラウンドにもこうした攻撃でダウンを奪った比嘉だが、試合を決める5ラウンドは圧巻だった。
尋常ならざるプレッシャーから体力を削がれたエルナンデスにボディで追加のダウンを奪う。試合を諦めずに立ち上がる前王者に日本ボクシング界の未来を担う若者は容赦なく襲いかかる。
ほとんど公開処刑のようなダウンを連発して、都合このラウンドで4度、合計6度のダウンを奪って有明コロシアムのリングに新たなスターが降臨した。
このスターはデビュー当初から「21歳で世界王者になる」と公言しており、マッチメークなど本人の努力ではどうにもならないような状況でも腐らす練習を続け、まさにあり得ないくらいの有言実行を達成した。口にするのは簡単だが、真似できるヤツはザラにはいない。
そして④では真打であるWBAミドル級王座決定戦について述べたい。

