そんなこんな①ではボクシングに対する今までの心の内を赤裸々に晒した訳だが、②から試合に対してのレポートを進めていくことにする。
この世界戦はトリプルメインと銘打って、3試合の世界戦が組まれていた。
その先陣を切るのは京都のBMBジム所属の拳四朗だ。
父は187cmという日本では規格外の体格で、日本ミドル級と東洋ライトヘビー級のベルトを取ったが、息子の拳四朗は母親の血を継いだらしく164cmと小柄なライトフライ級。
しかしボクシングセンスの方は父親譲りで、類い稀なる身体能力から新設されたWBCユース王座と、父親も獲得した日本&東洋のベルトもコレクションに加えた。
ベルトコレクターである拳四朗にとって、もちろん1番欲しいのは世界のベルト。この日、拳四朗は新たなベルトを奪うべく有明コロシアムのリングに世界王者に挑戦した。
そうした中でゴング。相手のWBC王者のメキシコ人ガニガン・ロペスはイッパツの強打はないが、スピードと手数、それと積極的な攻撃姿勢で、日本の若きボクサーにプレッシャーをかけた。
昔この世界王者と同胞で同じ苗字を持つ軽量級の名王者リカルド・ロペスは「東洋人というのはテクニックではそれほどでもないが、勇敢でスピードがあってなおかつ試合を諦めない精神的なタフネスも併せ持つ」と言っていたが、ガニガン・ロペスのボクシングはメキシカンでありながら、東南アジアのトップボクサーの長所とメキシカン特有なテクニックが融合したハイレベルな選手だった。
そうした王者に対して、序盤は様子見でパンチもカバディのようなタッチングゲームの様相を帯びていたが、試合中盤になると拳四朗が腰の入ったモーションから、サウスポーの相手に有効ないきなりの右ストレートで肉迫した。
4回の公開採点では差はそれほどなかったが、8回終了時のそれは2ポイント差で拳四朗有利だった。
この試合の終盤に入って気づいたことがある。両者共にクリンチ(抱きつき)やバッティング(頭突き)と言った技術の拙い選手に頻繁にある反則がほぼ皆無だった。
これは一般のファンにはわからないかもしれないが、自分たち経験者からすると凄いのだ。
ボクサーがペース配分を誤り、クリンチを多用するシーンを前座試合ではよく見るが、観客からすると苛立つことこの上ない塩試合(凡戦)と化す。
しかし、今回の試合ではそれは皆無だった。ダウン無し12ラウンド判定までもつれたが、レベルの高い試合だったので、あっという間だった。
結局試合は114-114と115-113(×2)で新王者が誕生。若き東洋人のベルトコレクターに最高のベルトが追加された。
③では次の世界戦を紹介したい。

