春先の訪れを知らせる桜の花を散らせる小雨の日だった2017年4月8日に、筆者は千葉県船橋市にあるプロバスケット・Bリーグ1部・千葉ジェッツの本拠地である船橋アリーナに辿りついた。

なぜ、サッカーとボクシングを中心に観戦していた筆者がこの試合を見ようと思ったのかと言うと、筆者はそれまで前述の2つの競技しか興味なかったが、自分のブログが視野の狭いモノになるのを避けるために、色々なスポーツを見るようになった。

そうした中で、昨年(2016年)統一プロリーグになったBリーグも、このブログで再三アップしてきた訳だが、その中でもこの試合は特別だった。

日本人唯一のNBAプレーヤーである田臥勇太の名前はバスケットに詳しくない人間でも一度は聞いたことがあるはずだ。

その田臥がアメリカでの活躍のあと、日本に帰国して、日本のコートで拠点を置いたのが、当時JBL(当時の実業団バスケリーグ)の栃木ブレックスだった。

日本のバスケ界は野球やサッカーと違い、プロリーグよりも実業団の方が資金力や環境などで上回り、日本代表選手も実業団の方が多かった。

栃木ブレックス自体はプロチームであったが、球団の方針でプロよりも実業団の方がチーム運営において利潤が出ると判断し、JBLでの活動を選択した。

そして、田臥が長らく日本屈指のポイントガード(SLAM  DUNKで言う宮城リョータのポジション)として実業団での活動をしていた一方で、2011年に千葉県にもプロバスケットチームが産声を上げた。それが千葉ジェッツだ。

発足当初はプロバスケのbjリーグでの活動を選択したが、bjでのアミューズメントの長所を取り入れる一方で、「競技レベルの高い」実業団リーグ(JBLからNBLと名称変更)への移籍を果たす。そしてこの日本に併存していた2つのリーグがBリーグとなって統合する。そうした中でハイブリッドな球団経営をしながら、千葉ジェッツはある選手の獲得に成功した。

それが富樫勇樹という選手である。富樫はバスケファン以外には馴染みが薄いが、身長がわずか167cmしかないのにも関わらず、幅広い視野と超絶的なインサイドへ切り込む身体能力を兼ね揃えていて、本場NBAの下部組織で現地スカウトから「トガシの獲得を検討したい」とまで言わしめたポイントガードである。

かたや日本人唯一のNBAプレーヤー(田臥)と、かたや今現在のNBAのコートに最も近いバスケットマン(富樫)が日本のプロリーグで雌雄を決する。しかも2人とも同じポイントガードというポジション。バスケ観戦歴の浅い筆者でもこの闘いに胸が踊らないはずがない。

そうした様々な人間の思惑が交錯する中で、船橋アリーナのボルテージは最高潮に達していた。

ここから先は②に続く。

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富樫勇樹