①ではアウエーのUAE戦について雑感を述べた訳であるが、②ではホームのタイ戦について述べたい。
昨年(2016年)のアウエーのタイ戦では地力の差で2-0で勝利したものの、2次予選のシンガポールのように着実に力を付けてきている東南アジア勢の追いかけて来る足音が聞こえてくるような躍進ぶりだ。そしてこの日の最終予選のホーム・タイ戦はどう感じたか?である。
スコアを先に言えば4-0で日本代表の圧勝であったが、正直スコアの差よりも日本とタイの実力差は縮まっているように見えた。
この日のタイ代表のプレーを見ていて印象深かったのは、足下の技術の巧みさ。
もう今の時点でタイ代表のレギュラークラスはJ2中位クラスのプレーヤーよりも、サッカー選手としての基本的なスペックは上である。もしタイ代表が2017年のJ2に参戦したら、プレーオフ圏内は十分射程に入るくらいの実力はある。
もともとタイという国はセパタクローという足でボールを操るバレーボールのようなスポーツを生み出した国でもある。ムエタイもそうだが、足で相手を撹乱させる動きを必要するスポーツが自国の文化に存在し、しっかりしたサッカー指導者さえいればタイはサッカー文化が成長する土壌は持っている国なのである。
あとタイ代表を見て思ったのは、鋭いロングカウンターを見に付けた統率の取れたチームに見えた。
タイ人FWやMFの足は短距離スプリンターのような瞬間的な加速力があり、スペースを作られたら、一気に置いてけぼりを食うような斬れ味だった。
しかし、これはバスケットのポイントガードが決めるスティールでも共通するが、タイ人がボールホルダーになってカウンターを掛ける時、そのボールホルダーはチームで1番信頼できるエースに全てを託そうと考える。
しかし、バスケで優秀なポイントガードがそのパスコースを嗅覚で嗅ぎ分けてパスカット→スティールを決めるように、日本代表の中盤も、タイ代表が安心してボールを預けられるのは10番のチャナティップだというのは、試合前のスカウティングでチェック済みだった。それ故にタイ代表は攻撃パターンを読まれ、日本代表からみれば危険を察する判断というのは容易だった。タイ代表が強くなるにはチャナティップのような選手が3人くらい必要だ、ということだ(簡単に言うなとタイ人に突っ込まれそうだが)。
筆者にとって、タイという国は若い頃にボクシングの練習で1ヶ月半お世話になった思い入れのある国である。
それ故、今回はタイ代表目線で記事を書いたのだが、タイのサッカーの飛躍をこうして目の当たりにするとは、正直想像出来なかった。
4年後のタイ代表というのはもっと力を付けて日本代表にジャイアントキリングも可能かもしれない、というだけの実力を感じた試合だった。