そんなこんなでやっと試合内容である。リーグ戦上位でプレーオフにも進出した1位の大同特殊鋼と4位の湧永製薬。それだけあってコート上の選手たちのプレーの精度やゴールやボールに対するハンパない執着心は素人から見てもヒシヒシと感じるモノがあった。
ハンドボールの試合展開というのはバスケットのような攻守の切り替えの速さとサッカーでいう中盤でのボールの奪い合いからのショートカウンターの応酬という両方の要素を組み合わせた感じだった。
そんな中でも両チームのプレースタイルというのもおぼろげながら見えてくる。大同の方はドッシリ構えて遅攻からパワーとテクニックで相手ゴールを脅かすイメージなのに対して、湧永の方はクイックな速攻からパスワークで相手のDFを撹乱させようとする意図を感じた。
コート上にはひょろ長い身体のハンドボール選手がいる中で、大同の22番だけ柔道部員のようなずんぐりむっくりな体型の選手がいた。
パンフレットを見たら、この選手は韓国人でパク・ジョンギュという。190cm・100kgという巨漢だ。プレーを見ているとPVで自分が率先してシュートを狙うというより、相手DFに対してバスケットのスクリーンではないが動きを塞いでシュートコースを開けるお膳立ての役割をしていた。
パク自身も何度かシュートを狙うシーンもあり、あの巨体の割には俊敏な動きで、肉団子が宙に舞うような動きだった。
しかし、この日のゴールを量産したスコアラーはパクではなく、20番の東江雄斗(あがりえ・ゆうと)と4番の藤江恭輔だった。
東江は特にハンドボール選手らしいジャンプシュートで、バレーボールの柔らかいトスを上げてもらった時に炸裂するウイングスパイカーのスパイクの様に強烈で、何度も湧永製薬のゴールマウスを斬り裂いた。
大同特殊鋼は退場者を出す時間帯もあり(ハンドだと反則でプレーヤーに2分間の退場が言い渡される)、そこで数的優位の湧永製薬に4点差まで詰め寄られる。
しかし、この日の主役である東江には関係なかった。プレーオフに対してのピークコントロールができたのか手のつけられないゴールラッシュ。筆者が見ただけでも東江だけで7点もゴールを量産した。
結局、試合は25-20で優勝の本命、大同特殊鋼がプレーオフ決勝に駒を進めた。
ハンドボールの観戦は2度目だが、攻守の切り替えが速くスピーディな上に得点もたくさん決まるハイスコアゲームだから、素人目にも飽きなかった。また楽しいスポーツ観戦の存在を知れて良かった。


