今回こうして自分の中のボクシング観戦歴に1つの区切りをつけるために見にいった後楽園ホールのボクシングの試合だが、セミファイナルの日本ランカー対決は思わぬ拾い物だった。

ウェルター級の日本ランキング2位のドリームジム所属の尹文鉉(ユン・ムンヒョン)vs同級6位のこの自主興行の金子ジム・藤中周作だった。

この2人のボクシングとしてのバックグラウンドは対照的で尹の方は生粋の韓国人ではなく在日コリアンで、アマチュアボクシングの名門・東京朝鮮高級学校ボクシング部出身でアマキャリアも豊富。2008年全日本新人王で重量級なのに戦績が17勝4KO4敗3分とアマ出身な技術重視のパワーレスなテクニシャンだ。

一方の藤中は叩き上げのプロから這い上がってきた。戦績も15勝中10KOとパンチ力もあり(6敗2分)、ボクシングというより拳闘といった殴り合いに本領を発揮する無骨なファイターだ。

そんな2人のフェイスオフのあとゴング。両者いきなり主導権争いでヒートアップした。

左ジャブを丁寧についてから、相手を牽制しつつジャブを嫌がった藤中に右クロスを決める尹に対して、藤中は身体ごと叩きつける(はじめの一歩で言う)ジョルトのようなハイリスクハイリターンなビッグパンチで応戦。両者応援団の歓声も凄く、日常では聞けないような破壊音が後楽園ホールの中でこだました。

その中でもペースを握っていたのは赤コーナーの尹だった。技術とキャリアという名の経験値に一日の長を持つ尹は、粗削りな藤中のビッグパンチを芯で貰わないようなディフェンスで致命打を避けて、その後のリターンで自らの軽打を藤中にお見舞いした。

一方で藤中も身体ごと叩きつける打ち方なので、頭から相手の身体に突っ込むような姿勢になり、両者の額がぶつかり2人ともおでこの上あたりが血まみれの傷だらけになった。

そうした中での8回戦。最終ラウンドの前の第7ラウンドに両者の頭がまたも思い切り激突。尹の眉間がパックリ開き、鮮血がキャンバスに滴った。

この状況で主審はドクターと相談し、試合を終了を宣言。最後までの完全決着を望んだ両者の応援団からは消化不良のため息が漏れた。

そうした中での負傷判定の採点。それまでのラウンドまでの採点で68-65、69-64、67-67のジャッジ二者が尹に優勢と判断し、尹文鉉が日本タイトル再チャレンジに歩を進めるランカー対決で大きな1勝を手に入れた。

そんなリングが前座試合で温まったあと、この日のメインイベント。東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチが始まることになった。〈③に続く〉



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