今回は筆者が20年以上関わってきたボクシング界のお先真っ暗な将来について述べていきたい。

今回、下の写真にあるがこの後楽園ホールの興行の第1試合が8回戦なのである。ボクシングを知らない人からすればだからどうしたと言う話だが、この状況は現在のボクシング界の劣化を象徴するような内容である。

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そもそもボクシング界のヒエラルキーにはC級(4回戦)→B級(6回戦)→A級(8回戦以上。ここから始めてランキングやタイトル挑戦に絡んでいける立場)とあって、本来ならA級ボクサーというのはお笑いで言う「トリ」に近い、ボクシング興行なら8時台以降の出場が普通である。

しかし、この興行ではC級・B級のボクサーは出場せず、いきなりメイン格に近いA級ボクサーが5時台に出場している。これは本当に日本のボクシングは劣化したな、と痛感したパンフレットだった。

このパンフを見て色々なことが解る。①少子化で若者の絶対数が少ない。②その少ない若者がボクシングに魅力を感じず、希望者自体がいない。③今のボクシング界の主力は、残りの選手寿命が短いおっさん世代のボクサーによって騙し騙し維持されている、といったところだ。

パンフの名前のボクサーも35歳だが、今回の興行のセミセミに出場したミドル級ランカーは37歳で、メインの東洋タイトルに挑戦した日本人も35歳である。こうしたボクサーの残りの選手寿命は5年持てばいい方だ。

しかし、彼らが引退したあとの2020年代前半になって次世代が育っていないのは、このパンフの写真を見れば明白だ。だから「日本のボクシング界は劣化している」というのだ。

そして、今回のタイトルにあるボクシング界の劣化は小麦の不作と同じとはどういうことかという話だ。

小麦の麺というのはスパゲティでもラーメンでもうどんでも豪州産が主流だという。

そのため豪州の小麦が日照りなどで不作になったら、その少ない小麦粉をめぐって、日本のスパゲティ屋やラーメン屋など飲食店で争奪戦になるのは明白。

しかし、その高くなった小麦を材料にしてスパゲティやうどんを作り、店主が「原材料の小麦が値上がりなので、当店のスパゲティも値上げします」といったところで、客からしたら「そんな店の都合など知らん。昼飯代が高くなるなら、自分は安いのり弁や牛丼を選ぶ」と別の選択肢に流れる。だからこうした店の店主は値段据え置きで量を作って稼ぐしかない、という話だ。

ボクシング界もまんま一緒。「ボクシング界は今瀕死の状態でチケット代を値上げします。でも皆さん会場に来てね」といったところで客からしたら「そんなオワコンの事情など知ったこっちゃない。立ち見で4000円も取るようなチケット買うくらいならもっと安いサッカーのゴール裏や映画のチケットを買う」という選択肢を選ぶ客が99%だ。ましてやボクシングなどラーメンやうどんと違い、ほとんどの人にはなくたっていい最たるモノだ。

かくして客の都合ではなく、自分の都合だけでチケット代を値上げしたボクシング界の劣化は加速していき、おそらく2020年代前半には日本のボクシング界は韓国のボクシング界のように瀕死の状態になるだろう。

自分の青春のエネルギーを全て費やしたボクシング界が滅ぶのは寂しい面もあるが、ボクサーが搾取されて、チケットを買うお客様に過度な負担を掛ける今のシステムはいずれ劣化していくし、それはもう仕方ないことだ。

筆者としても既得権者が古いシステムに執着するボクシングがなくても、野球やサッカーといった他の娯楽をスパゲティから牛丼に切り替えるように楽しめばいいだけであって、何の不都合もない。

こうしたボクシング界の現状に対して、最後にドイツ哲学の先駆者として名を残したニーチェの言葉で締めたい。

「脱皮できない蛇は死ぬ」