ここまで今回は筆者が板橋区にある西が丘サッカー場でのJFL開幕戦・武蔵野シティvsヴァンラーレ八戸戦に観戦に行くプロセスについて述べてきた訳であるがようやくここから前半について入っていきたい。
両チーム共に戦術としては3-5-2のように見えた。筆者がサッカー観戦を始めた2008〜9年頃のJでは(まだJ2までしかなかった)ほとんどのクラブが4バックだったのに、2017年シーズンにはプロ化を目指す4部リーグ同士の対戦でも3バックがだいぶ目につくようになってきた。野球の変化球にも流行り廃りがあるように、サッカーの戦術にも同様なモノを感じる。
そうした中で、主審の決戦の火蓋(ひぶた)を切るホイッスルが鳴る。
まず仕掛けていったのはホームの武蔵野だった。ボールを丁寧に繋いでいきたい意図を感じるボール回しだ。
しかし、八戸の中盤やDFの包囲網に掛かり、そうした武蔵野の意図の通りには試合を進ませないと言う意思表示のようなパスカットだった。
その一方で、八戸の方もベルマーレ湘南ユース出身で元町田ゼルビアの11番村上聖弥の個人技や15番井上翔太郎のフィジカルに頼った典型的な「王様FWと10人の小人たち」スタイルのサッカーだった。
そうした中で試合の前半は両チーム、中盤の選手の読みが冴えていたのもあり、中盤での潰し合いになり、決定的なシュートシーンがほとんどなかった。特に武蔵野のキャプテンで7番の岩田啓佑の危機察知能力は高く、八戸の立ち上がりのシーンで試合をほとんど作らせなかった。
しかしそうしたシュートシーンの少ない試合というのは、見る側からすれば「塩」になってしまう部分もあり、序盤は退屈でもあった。
このまま前半終了かと思われた前半40分、試合が動いた。
前半はチャンスらしいチャンスがほとんどなかった八戸が、CKという名のこの試合初めてのチャンスを得た。
GIANT KILLINGでETU番記者の山井さんが「セットプレーというのはそこだけ別のスポーツのようなもんだ。どんな内容のゲームであってもこのプレーだけで試合を決定づけられたりする」といったが、このCKを見た時、筆者の脳内に山井さんのこの言葉がフラッシュバックをした。
キッカーが右足のCKで巻いてくるボールをゴール中央に供給すると、そのボールを頭で叩いたのは11番村上聖弥っ!軌道が変わったボールはGKの手をすり抜け、ゴール右隅に吸い込まれていった。
前半はほとんどチャンスのなかった八戸がセットプレーから先制ゴールが生まれた。村上は身長こそないものの一歩目の動き出しのタイミングが良かったのか、空中戦に競り勝った値千金のゴールだった。
一方で武蔵野にしてみれば自分たちのペースで試合を進めたものの、ワンチャンスを決められまさかの先制点献上。
アウェーで勝ち点3が欲しい八戸。このままでは終われない武蔵野。後半の展開は④へと続く。

