①ではアジアにおけるそれぞれの国民性について共通点があるところがあるという指摘をし、その前半がインドネシア人・韓国人の共通点についてだった。②ではもう1つのグループを見ていきたい。
このグループで紹介したいのはタイとフィリピンという国同士の共通点だ。
タイとフィリピン。この2つはボクシングにおいても不倶戴天の敵、宿命のライバル関係という構図なのだが、第三者の日本人である筆者の眼からすると、共通する部分が見えてくる。
タイ人とフィリピン人のボクサーとしての共通点。それは勝利についての執着心がほとんどなく、試合結果に対して淡白だということだ。
勝負事に対して淡白とあるが、ノンタイトル戦に地元の日本人選手と闘う時に、1R開始直後のボディーであっさり倒れ、ブーイングの嵐の中で10カウント(KO)というのはよくある。
①でも述べたようにノンタイトルなら勝っても負けても報酬は変わらない。だったらダメージを溜めないうちにさっさと倒れようというタイ人・フィリピン人は昔から多かった。
しかしこちらの場合、例外も存在する。タイ人やフィリピン人が東洋タイトルマッチに挑戦する時は、ジャパンマネーが稼げると途端に異常なモチヴェーションで頑張る。
あっさり軽いボディーで倒れたフィリピン人が、東洋タイトルがかかり(彼らの国に換算したら大金になる)ファイトマネーが絡むと俄然やる気を出す。そうした現金なキャラクターもこの2つの国にはある。
しかし一方で、ノンタイトル戦でも最近のフィリピン人はたった2つの拳でアメリカンドリームを体現したマニー・パッキャオの活躍に勇気づけられ、今までだったらあっさり負けていた噛ませ犬のフィリピン人が最終ラウンドまで頑張ったり、下手すれば、噛ませ犬が噛みつき返してアウエーである日本で勝つこと出てきた。
だから、厳密にいえばフィリピン人全員が勝負に淡白な訳でもないという傾向になりつつある。
あと①で述べたマッチメーカーなどが現地のコーディネーターとの付き合う際でも書類がこない場合、インドネシア・韓国ならなだめすかした方がいいと言ったが、タイ・フィリピンの場合は「コラッ」と軽く叱責するような催促の方が効果的だという(しかし、怒鳴りつけたら逆効果)。
こうしてボクシング界から見たアジア人の気質の違いというモノを見てきた訳だが、長くボクシングの試合を見ていると、そうした試合とは違った個性が見えてくるのも興味深いモノがある。